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■認知症女性に不動産契約…10倍の価格で売りつける

認知症の高齢女性に相場の約10倍の価格で不動産を売却したとして、男らが逮捕されました。 男らは約9万人分の高齢者名簿を手に入れ、認知症患者を標的にしていたとみられています。

認知症で1人暮らしの80代女性に不動産契約を結ばせて金をだまし取った疑いで、6月25日に男4人が再逮捕されました。

容疑者らはインターネット不動産販売の従業員を名乗り、80代の女性宅を約20回訪問。古いアパートの一室を約300万円で購入し、被害者に約10倍の3400万円で売り付けたということです。 認知症の人ら約50人から約1億3000万円をだまし取ったとみられています。 ■押収された9万人の名簿『80歳以上』の謎

認知症患者を標的にした詐欺事件が増えています。逮捕された容疑者の男らから押収されたのは、80歳以上の高齢者、約9万人分の電話番号などが入った名簿でした。

詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田文明さん
「犯行グループの裏には、不正な方法で個人情報を入手する“闇の名簿屋”がいて、そこから得た情報を厳選して、80歳以上を抽出したと考えられる」 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
犯行グループは、“闇の名簿屋”の情報を基に何度も電話をかけて、
●1人暮らしかどうか
●認知症かどうか
●家族との連絡頻度は
●資産はどのくらいか 
など名簿に情報を加えていく。 認知症の人の年齢別の割合です。
80歳以上で急に割合が増えています。そのため、犯行グループは認知症の割合の多い80歳以上の名簿を持っていたとみられます。 認知症の高齢者が保有する資産額です。
金融資産は約142兆円、不動産資産は約68兆円、合計で約210兆円と言われています。 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
「電話で話せば認知症かどうか分かる。認知症の方は辻褄が合わないことでも『はい』と返事をしてしまう」 認知症かどうかがわかる、やりとりの実例です。

犯行グループが「以前〇〇を購入しましたよね?」と聞き、 認知症の人が「はい」と答えます。
しかし、しばらくして「〇〇は購入していないですよね?」と逆の質問をしても、認知症の人は「はい」と答えるということです。

もう一つ、やりとりの実例です。

犯行グループが「ご注文ありがとうございます。以前ご注文いただきました商品を発送します」といきなり電話しても、認知症の人は「はい」と、注文していないのに受け入れてしまうということです。

次のページは ■押収されたマニュアル…チェック項目も

■押収されたマニュアル…チェック項目も

認知症の80代女性が騙された事件で容疑者らから押収されたのは、最初にかける営業電話用のマニュアルでした。

このマニュアルには、電話をかける際、インターネット不動産販売会社の従業員を名乗り「昔おばあちゃんが『やめずに頑張りなよ』 と言ってくれたから、頑張っている」という文言などが書かれていたということです。 さらにチェック項目として、
●口が軽いか
●こちら側が主導できるか
などの項目があったということです。 ■80代女性被害の犯行手口『被害者名義の口座開設』

逮捕された男らの犯行手口です。
80代の女性をだまし、容疑者らのスマホを使って勝手に80代女性名義の口座を開設して、容疑者らの支配下にある口座を作ります。

容疑者らは金融機関の窓口に80代女性と一緒に行き、80代女性の名義で勝手に開設した口座に振込みをさせ、その後スマホで自分たちの管理する口座に送金したということです。 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
「これまでにない出金先があると銀行側に疑われるが、出金先が本人名義なら多額の送金をしても疑われない」 次のページは ■実録・給湯器『点検商法』高齢者は特に注意

■実録・給湯器『点検商法』高齢者は特に注意

特に高齢者が注意が必要な『給湯器の点検商法』です。

82歳の男性Aさんが被害にあったケースです。被害にあったAさんは、軽度の認知症を患っています。

息子さんによると、
「人から話しかけられたら『はい』『はい』と言って、何でも受けてしまう感じ。自分で判断することができなくなっている状態」だということです。 Aさんは一人暮らしで、息子たちやヘルパーが交代で世話しています。ある日、息子が父を訪ねると、テーブルの上に給湯器工事の契約書がありました。本人のサインもありましたが、本人は全く覚えがありませんでした。 契約書の内容は、給湯器本体と工事費で約33万円でした。

息子は「(今使っている)給湯器の状態は全く悪くなく、普通に作動していたので、だまされたのかなと」いうことでクーリング・オフをしました。
クーリング・オフ制度とは、訪問販売の場合は、契約から8日以内であれば無条件で契約を解除できる制度です。

こうした高齢者を狙う『点検商法』は、『屋根』『床下』『給湯器』などです。 多田さんによると、
「高齢者が“自分で確認できない”というのがポイント」だといいます。 特に、給湯器の点検商法に関する相談は急激に増えていて、2023年度は前年度の約3.5倍です。そして、契約当事者の7割以上が70歳以上だということです。 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
「リフォーム系はこれまでにもトラブルが多く、かなり注意喚起されてきたが、給湯器はこれまで悪質業者があまり手を出していなかったので世間の警戒感が薄く、最近被害が拡大している」 80代女性Bさんのケースです。
息子と2人暮らしですが、息子が仕事で不在の時に、突然、30歳前後の女性が訪問してきました。
「ガスの点検に来ました」ということでしたが、Bさんによると「相手が名乗ったかどうかはわからない」ということです。 これまでBさんは給湯器の不調を感じたことはなかったのですが、点検に来たという女性は「給湯器の調子が悪い。古いから取り換えるしかない」と言いました。具体的な説明はありませんでした。
しかし、Bさんはその場で契約してしまい、取り換え工事費として、29万7000円を現金一括払いで請求されました。 契約書には、『10年以上点検お値引き一式』14万7600円という謎の値引き項目がありました。

多田さんによると、これは「大幅な値引き項目を作り『得だ』『安い』と思わせる手法」だということです。
Bさんが地元のガス会社に話をしたところ、「騙されているかも」と言われて、クーリング・オフできたので被害は未然に防げました。

■悪質業者に狙われない対策…家族ができることは?

認知症の高齢者が、悪徳業者に狙われないために、家族ができることは何でしょうか?

一つめは、成年後見制度を活用することです。
成年後見制度とは、認知症などで判断力が不十分な場合に家庭裁判所が選んだ後見人が、本人に代わって財産管理などを行う仕組みです。

詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
「悪質業者の中には、この制度を使っているかを電話で聞き出して、使っている場合は名簿から外すこともある」 二つめは、電話を留守電にしておくことです。
また、会話を自動録音する機能や、録音していることを告げる機能がついている電話機を設置し、こまめに家族が確認します。 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト 多田さん
「可能であれば『折り返しの電話番号を聞く』こと、『長話しない』ことも大事」 (「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年7月3日放送分より) この記事の写真を見る(28枚)
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