リターンのために用意したオーガニックせっけんを持って、クラウドファンディングへの協力を呼びかける藤原泰明さん=さいたま市大宮区で

 パレスチナ自治区ガザの戦闘で、パレスチナ伝統のせっけん産業が危機にひんしている。同自治区ヨルダン川西岸地区ナーブルスに伝わる「ナーブルスソープ」の工場が全て停止し、輸出できない状態だ。伝統産業の危機に、さいたま市の輸入会社が「パレスチナ最後のせっけん工場を未来につなげる」と、クラウドファンディングで支援金を募っている。(藤原哲也)

◆1000年超の歴史、度重なる紛争で窮地に

 「せっけんという手軽なものを通じて、パレスチナ問題を知らない人たちに一人でも多く関心を持ってもらいたかった」。輸入会社「ユアオーガニックス」の藤原泰明専務(44)は始めた意図をこう話す。

定番のナチュラルオリーブに加え、アボガドやブドウなど計9種類あるナーブルスソープ=ユアオーガニックス提供

 同社によると、パレスチナのせっけん産業は10世紀ごろから始まり、植物由来の伝統的な製法を守ってきた。ナーブルスソープはヨルダン川西岸地区で栽培されたオリーブオイルが主な原料で、栄養価の高いオレイン酸や天然保湿成分などを豊富に含む。「パレスチナせっけんの歴史に魅力を感じて会社を設立した」と藤原さん。2017年から現地の会社を通じて輸入を始め、これまでに9種類3万個以上を販売した。  そんな歴史ある伝統産業も、度重なる紛争で窮地に立たされている。1930年代に30軒以上あったせっけん工場は、現在は2軒しか残っていないという。追い打ちをかけたのが昨年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲攻撃。戦火はパレスチナ各地に広がり、せっけん工場もすぐに停止に追い込まれたという。同社の在庫も一部欠品していて入荷のめどが立たない。

◆厳しい製造再開「苦しんでいる地域に心寄せて」

現地にあるせっけん工場の様子=ユアオーガニックス提供

 今年4月、工場を経営する一族から犠牲者が出たことを知った藤原さんは緊急クラウドファンディングの立ち上げを決意した。「現地はオリーブ畑も戦場になっていて、しばらく製造再開は厳しい。ガザ以外に苦しんでいる地域があることも知ってほしかった」と語る。  目標金額は50万円で期間は7月23日まで。工場存続のサポートなどに充てられる。今回リターンとして同社は、日本未発売の伝統製法で作られたオーガニックせっけんを用意。1個2750円から受け付け、通常のナーブルスソープも1個2060円で販売する。  藤原さんは現地からの情報としてナーブルスでも子どもたちが戦闘の犠牲になっていると指摘し、「パレスチナには自由がなく、イスラエルとの対立が続く限り、パレスチナ人はその中で生きていかなければならない。この場所で起きている異様さに少しでも心を寄せてほしい」と訴える。  クラウドファンディングの詳細はユアオーガニックスの専用ページを参照。 

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