国立青少年教育振興機構は2日、高校生のSNS利用に関する調査報告書を公表した。
調査は令和5年9月から6年1月に日本、アメリカ、中国、韓国の高校生を対象に実施。4カ国ともSNSを「利用している」と回答した割合は9割以上であり、特に日米韓では96%を超えている。
96%超がSNS利用…開始時期は日本やや遅め
SNSを利用し始めた時期について、日本の高校生は「中学1~3年」と回答した割合が49.6%と最も高く、次いで「小学4~6年」28.5%、「高校生になってから」11.7%の順となっており、「高校生になってから」の割合は4か国の中で最も高い。
対人関係の変化では、友人や親(保護者)、きょうだい、先生との関係が、SNSを利用することで「変わらない」と回答した割合は51.4%で、4か国の中で最も高くなっている。逆に「少し悪くなった」「非常に悪くなった」と回答した割合は1.2%で最も低い 。
「推し活」目的は4カ国中最多36.7%
日本の高校生はSNS利用の目的について「ゲームや音楽などの娯楽」が86.2%と最も高く、「趣味や興味のある話題に関する情報の収集」(82.4 %)、「リアルな友達や知り合いとのコミュニケーション」(76.7 %)、「家族との連絡」(75.8%)と回答。いずれも米中韓に比べて最も高くなっている。また、「推し活」を目的とする割合が36.7%で、米中韓より13ポイント以上高いのが特徴だ。
SNSを使って「よくしている」「ときどきしている」と回答したものの割合は、「オンラインゲーム」が54.3 %、「投稿を誰でも閲覧可能な範囲に公開する」が25.3%、「投げ銭をする」が3.6%と、いずれも4か国の中で最も低い。
日本の高校生は“リア友”とのコミュニケーション重視
一方、SNSを通じて知り合った人が「いる」と回答した割合は49.2%で、うちその人と実際に会ったことが「ある」と回答した割合は43.3%。また、「リアルの友人よりもSNSで知り合った人のほうが気持ちを伝えやすい」が18.5%、「友達と直接話すより、SNSを通じたほうが気持ちが伝えやすい」が26.7%と、「そうだ」と「まあそうだ」と回答した割合が米中韓に比べて低い。日本の高校生は他の3カ国と比較して、リアルの友人とのコミュニケーションを重視している傾向が分かる。
他ではSNS を利用することで「趣味や興味のあること」が「増えた」と回答した割合は88.8%、「お金を使うこと」が「増えた」と回答した割合は52.0%と4か国中で最も高く、「社会への関心」が「高くなった」と回答した割合は55.9%と、中国(67.2%)に次いで高い。一方、「学習に対する意欲」が「高くなった」と答えたのは25.8%、「時間を管理する能力」が「高くなった」は20.2%と、4か国中最も低かった。
SNSの利用による精神状態については「寂しくなる」「イライラする」ことが「よくある」「ときどきある」と回答した割合はいずれも約25%で、4か国中最も低い。一方でSNS利用による不安や心配として「ネット依存」と回答した割合は48.8%と、最も高かった。
トラブルは4カ国中最も少ないが対応課題
日本でもSNS上でのトラブルや誹謗中傷がたびたび話題になるが、SNSを利用していて「個人情報が漏えいされたこと」「架空請求をされたこと」「アカウントの乗っ取りをされたこと」が「ある」と回答した割合はいずれも9%未満で4カ国中最少。また、SNS上で悪口や嫌がらせを受けることが「よくある」「時々ある」と回答した割合は4.3%で、米国(30.4%)、中国(11.8%)、韓国(10.1 %)に比べて最も低い。
筑波大学人間系心理学域准教授の藤桂氏は、SNS上でのトラブルや誹謗中傷に巻き込まれた際の対応について、「日本では件数が他国と比して低いものの、被害時には『無視する』方向での対処が取られやすく、事態のエスカレートの危険性が伴いやすいことが示唆された」と指摘した。
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