物流の停滞が懸念される「2024年問題」により、福岡県名産のイチゴ「あまおう」の輸送に黄信号がともっている。全生産量の約7割を関西や首都圏にトラックで届けているが、4月からの運転手の残業規制強化に伴い、これまでの集荷から3日以内の販売が困難になる恐れがある。農協は配送効率化へフェリーの活用を模索する。(共同通信=東岳広)
「鮮度が落ちたり、運送経費がかさんだりして他の産地に負けないか心配だ」。福岡県大木町でイチゴ農園を営む上原基揮(うえはら・もとき)さん(49)は気をもむ。全国農業協同組合連合会(JA全農)福岡県本部の幹部も「農協の荷物はもう運ばないと言われかねない」と漏らす。
福岡県が開発したあまおうは「あかい、まるい、おおきい、うまい」が由来。果実が大きく、甘みと酸味のバランスの良さが人気だ。農協が苗を県内農家に限り販売し、初冬から春に出回る。
農家が摘み取ったあまおうが農協ごとの集荷場に届けられる。その後、千キロ超離れた首都圏なら休憩時間を除いて15時間ほどかけてトラックで運ばれ、数カ所の市場などを経て店頭に並ぶ。
イチゴなどの青果は出荷量が天候に左右される上、温度管理や到着時間も厳格に対応する必要があるため、運び手から敬遠されがちだ。
九州の玄関口である北九州市には昨秋、物流規制を見据えて冷温管理が可能な物流拠点が国の予算で整備された。JA全農は県内の農産物を集めてフェリーに積む算段を立てる。関東行きなら北九州市の門司を深夜に出発し、翌日午後9時前には神奈川県の横須賀に到着。その翌日未明の競りに間に合う。
フェリー輸送は割高だが、トラック運賃も上がる可能性があり、県内の各農協は船舶にどの程度切り替えるか検討中だ。
福岡県八女市のJAふくおか八女は、トラック運転手の拘束時間の短縮に乗り出した。箱詰め後に荷台に手作業で積んでいたあまおうをパレットに載せ、まとまった量をフォークリフトで運べるようにした。
同じく九州のイチゴ産地で、「ゆうべに」の品種で知られる熊本県や「ゆめのか」の長崎県も同じく輸送の課題を抱える。ライバルである「とちおとめ」の栃木県は首都圏に近く、遠方産地の危機感は強い。
JAふくおか八女いちご部会の吉田幸雄(よしだ・ゆきお)部会長は「輸送時に傷まないようタイミングを見計らって収穫し、選ばれるブランドを目指したい」と話している。
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