SNS上で著名人になりすまして投資などを呼び掛けるニセの広告で、1億円以上だまし取られるという被害が相次いで発覚しています。多くのニセ広告に悪用されているジャーナリストの池上彰さんに協力頂いて、“池上さんを名乗る人物”を問い詰めました。
■ニセ広告を見て…池上さん「言うわけがないですよ」
10日、番組の取材に応じたのはジャーナリスト・池上彰さん。SNSに表示される自身のニセ広告を見てもらいました。 池上さん「(Q.SNSで出てくる画面ですが、これは見たことありますか?)初めて見ましたね。色々ニセモノが出ているというのは聞いてはいますけど。これは初めて見ましたね。『全額ブチ込め…』。下品な表現ですね。そもそも、つみたてNISAって上限が決まっていますよね」
「(Q.1万円で始めたら2日でプラス80万円。こんなことあるんですか?)あり得ないでしょう。ましてNISAでしょう?株式投資でこんなことは、あり得ないですよね。こんなにいい話があったら、本人がやればいいだけの話」 ニセ広告は、他にもあります。 池上さん
「(Q.『今は絶対に新規債券をやってはいけない』と言ったことは?)あるわけないです。ありません。そもそも債券ってどんなもの?って説明をすることはあっても、それをやってはいけないとか、やるべきとか言うことは絶対にあり得ない」
池上さんは、テレビ番組などで新NISAや債券などについて解説することはあっても、人に勧めたりすることはないと言います。
池上さん「(Q.『新NISAに最適 買い増したい高配当株』これは、オススメしたことは?)する訳ないですよね。新NISAが始まっているでしょ?周りの若い人で新NISAを始めましたという人、結構いるんですね。そういう人をカモにして、だまそうとしているんだと思う」
「(Q.これは詐欺?)もちろん詐欺です。私が、こんなこと言う訳ない」
さらに、「貯める人ほどバカをみる!」という文言もニセ広告にありました。この件について、池上さんは次のように話します。
池上さん「言うわけがないですよ。これはテレビ東京の特番の写真です。Webサイトから勝手にキャプチャーしたんでしょうね」
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■池上さん“怒りあらわ”番組画像も無断で使用■池上さん“怒りあらわ”番組画像も無断で使用
次から次へと出てくるSNSのニセ広告について聞いてみました。 池上さん「Metaですよね。私、そもそもFacebookやっていませんから」
「(Q.やっていないんですか?)やってません。(この広告では)そもそも私の肩書が『経済アナリスト』になっていますよね。私、『経済アナリスト』ではないので。『ジャーナリスト』なので」
なかには、こんなニセ広告もあります。
池上さん「テレビ朝日の番組じゃないですか。こんなものまで、使われているわけですね」
「(Q.いつの放送?)髪の毛の白さから最近でしょうね。10年続いていますから。だんだん髪の毛が黒から白に変わっていますから、たぶん最近ですよ」 テレビ朝日で放送されている池上さんの番組画像も、無断で使用されていました。 池上さん
「本当に許しがたいですよね。結果的に、これでだまされる人がいらっしゃれば、その方はもちろん被害者ですが、勝手に使われている私も被害者だし。テレビ朝日の番組ですからね、信頼に関わりますよね。テレビ朝日の方からも削除要請をしているんですけど、全然削除されないんですよね。掲載しているプラットフォームの責任が問われますよね」
池上さんは、Facebookを運営する会社Meta社への怒りをあらわにしました。
池上さん「(Meta社には)ある種、詐欺の片棒を担がされているという自覚をもってほしい」
「(Q.池上さんも削除要請している?)私も含めて、周りの友人たちもこれ(ニセ広告)に気が付くと、ニセモノだって言って削除要請してくれていますけど。全くダメですね」
「(Q.一度でも削除されたことは?)ないですね」 池上さんが、自身の画像が使われていることに気付いたきっかけは…。 池上さん
「今年の初めぐらいに、昔一緒に仕事をした人から『お前、こんなこと始めたのか?』って来てビックリして。『そんなのやっていませんよ』と。そしたら『いっぱい出ていますよ』と言われてビックリした」
「(Q.実際にご覧になった時は?)がくぜんとしましたよね」
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■徹底追及…池上彰さんvs.ニセモノ■徹底追及…池上彰さんvs.ニセモノ
池上さんの写真を無断使用して作られたニセ広告。アクセスすると、LINEの友達登録を促され、QRコードが表示されます。 池上さん「(Q.QRコードが出てくるんですが、これを友達登録してみたいと思います)出ましたね。東京タワーをバックに私の写真が…」
「(Q.Ikegami Akiraと書いてありますね、これは?)もちろん、こんなのやっているわけないですよね。ただし、この写真は出版社用の表紙の写真として撮影したものだと思います。それが勝手に使われている」 池上さん本人になりすましたアカウント。ホーム画面には「成功への道は遠回りすること!」と書かれています。友達登録してみました。 池上さん
「(Q.あ、来ました)なんて書いてあります?」
「(Q.『初めまして、池上彰です。』と書いてあります)本当だ」
「(Q.『LINEを追加した後、何を知りたいですか?)何を知りたい…それは、あなたは誰ですか?って」
送信後、すぐに返信がありました。
池上さん「(Q.『池上彰です。』と来ました)『それを証明して頂けますか?』と。『池上彰本人だということを証明して頂けますか?』とお願いします」
池上彰と名乗る人物を、池上さん本人が問い詰めます。
池上さん「(Q.怒られています。『広告を見てから私を追加したんじゃないですか?』って…)『信じたから入ったんだろう?』という意味ですか?」 電話をしてみます。 池上さん
「(Q.池上彰さん(ホンモノ)が、池上彰さん(ニセモノ)に電話しています)まぁ出ないでしょうね」
電話に出ません。「電話できますか?」と聞いてみます。その後、すぐに既読はつきましたが、返信はありませんでした。
池上さん「(Q.一応確認なんですが、池上彰さんですよね?)はい、そうです。本人でございます。本人だと証明しろと言われると難しいですね。一応、免許証などはありますけど。難しくなりますね。哲学的な課題になりますね」
「(Q.池上さんのスマホは。今、反応は?)あそこにスマホ置いてありますけど、何の反応もしていませんよ」 “池上彰さんを名乗る人物”は、他にもいます。 池上さん
「(Q.『本人ですか?』って聞いたら、『はい、本人でございます』って返ってきたんですが…)私のニセモノが、いっぱいいますね」 他の広告からアクセスをすると、先ほどとは別の池上彰というニセアカウントが出てきました。 池上さん
「(Q.『ご返信お待ちしております』って書いてあるんですが、これ『今、横に池上彰さん本人がいるんですけど』と送っていいですか?)いいですよ。どうぞ」
しかし、本物の池上さんに恐れをなしたのか、返信は途絶えてしまいました。
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■“ニセ広告”は「絶対許されないこと」■“ニセ広告”は「絶対許されないこと」
さらに番組スタッフは日中、別の“池上彰”と名乗るニセアカウントとやり取りをしていました。 ニセアカウント「こんにちは。私は池上彰です」
「後ほど私たちのグループにご招待させて頂きます」 番組スタッフがメッセージを受け取った時、池上さんは…。 池上さん
「名古屋の大学で3つの授業をやっていましたから。午前1コマ、午後2コマ、90分授業それぞれ3コマやっていましたから。お応えできるわけがない」 しかし、その後…。 二セアカウント
「私はパートナーの田中正雄とともに、投資学習グループを作りました。分からないことがあれば、アシスタントの浅野にご連絡ください」
池上彰を名乗る人物から、パートナーとアシスタントの2人を紹介されました。
池上さん「(Q.(パートナーの)田中正雄さん、この方は?)田中正雄…もちろん存じ上げません」
「(Q.ご存じないです?)はい、見たことないです」 池上さんのパートナーとして紹介された“田中”という男に電話を掛けてみました。 池上さん
「(Q.電話出ないですね)出ませんね」
こちらも、電話には出ませんでした。
SNSで池上さんをかたるニセ広告について、池上さんは次のように話します。 池上さん「絶対にだまされないで下さいね。私は、こうやって投資を呼び掛けたりということを一切しません。そんなのがあったら『嘘だ。詐欺だ』と、ぜひ気づいてください」 実際に被害者が出ていることについては、次のように話します。 池上さん
「本当に心が痛みますし、私もとにかく怒りますよね。絶対許されないことだと思います」
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■堀江氏、怒りあらわ「なめられてる」■堀江氏、怒りあらわ「なめられてる」
SNS上で著名人の顔写真や名前を利用し投資を呼びかける“ニセ広告”。悪用されているのは、池上さんだけではありません。 経済ジャーナリスト 荻原博子氏「もう本当に衝撃でしたよね。冗談じゃないわよって」 投資家 桐谷広人氏
「桐谷広人の名前で『LINEでつながりましょう』と言ってきたら、それは全部偽物で詐欺ですから注意してください」
警察庁によると、被害は去年1年間で認知されただけでも2000件を超え、被害額はおよそ278億円に上っています。
今週、新たに都内の70代男性が1億4000万円、栃木の60代女性が1億2000万円だまし取られていたことが分かりました。いずれも、SNS上で著名な実業家をかたった犯行でした。先週行われた自民党の部会に参加したのは、実業家の前澤友作氏と堀江貴文氏。2人とも多数のニセ広告に利用されています。
堀江氏と前澤氏は、ニセ広告の掲載を続けるMeta社に対し、怒りをあらわにしました。
堀江貴文氏「もう削除しろ削除しろって、もう1年以上言っているんですよ、ずっと。なめた対応しかしないんで、ずっとなめられてます。この広告にだまされるかって思いながら見ていますけど。それでだまされる人がいるってことは、広告規制しないとだまされちゃうってことじゃないですか」 前澤友作氏
「(Meta社側は)頑張ってAIを使ったり、人力で広告をちゃんと審査して、なくすように努力はしているんだけど、全部はなくせないので勘弁してくださいよと。その点、理解してくださいみたいなことをおっしゃるんですけど。いやいや、使われている僕もそうだし、被害に遭っている方もいらっしゃるので、1点でもそういう広告を出しちゃダメだと思うんですよね。ちょっと今準備中で、まだ具体的なこと決まってないんですけど、アメリカの弁護士と連携して、本国のMeta社を提訴する準備をしてます」
会合に出席した前澤氏らは「日本は海外に比べて対策が後手に回っている」と指摘。法整備も含めた規制の強化を求めました。
堀江氏「僕自身の正規の広告がBAN(凍結)されたり、クレジットカードを止められたりとか。色んな被害が出ている」 前澤氏
「例えば今後、僕が自分で広告を出して自分が広告塔になって、何か大事なことをみなさんにお伝えしたい時に、その本当の広告も偽物なんじゃないかって思われる可能性ありますよね。僕の活動にとっても今、悪影響を及んでしまっているので、何とかしていただきたい」
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■巧妙な手口…海外に巨大グループ■巧妙な手口…海外に巨大グループ
SNSでの投資詐欺は、どのような組織が行っているのでしょうか。先月、SNSを使った詐欺行為を繰り返していた巨大グループが、タイで一斉摘発。その巧妙な手口が明らかになってきました。
床に並べられた大量のパソコン。その数は200台以上。スマートフォンは1000台以上にも上ります。これは、詐欺グループが使用していたものです。 拘束されたのは、中国人とタイ人からなる詐欺グループの63人。“日本人をだますためのチーム”を作り、詐欺行為に及んでいたといいます。 「日本語翻訳グループ」と名付けられた容疑者らのチャットを見てみると、中国語を日本語に訳しているアカウントがあります。そして、「ここはクエスチョンマークです。変更して」というメッセージを送り、添削をしていたとみられるアカウントもありました。容疑者の中に日本人はいませんでしたが、文章を作成、翻訳、添削と役割を分担。「日本語をより自然にさせていた可能性がある」といいます。
被害者との実際のやり取り「初心者の方であれば、投資する前にもっと辛抱強く勉強する必要があります」
実際に被害者とやり取りしたLINE。詐欺グループ側からのメッセージには、流暢(りゅうちょう)な日本語が使われていました。
これまで、番組ではニセ広告詐欺の取材を進めてきました。そんななか、新たな事実が判明しました。
カンボジアを拠点に活動していた詐欺グループには、日本人が犯行にかかわっていたことが判明。 犯行に関与した日本人「LINEグループのサクラの日本語をチェックしていた」
指示役の中国人が、自動翻訳で作った日本語のメッセージを“自然な日本語に修正する役”だったといいます。
巧妙化し続ける犯行。一部の被害者は、ニセ広告を掲載し続けているMeta社の日本法人「フェイスブックジャパン」に対し、今月中にも2000万円の損害賠償を求め集団訴訟を起こす予定です。 ニセ広告詐欺についてのMeta社の声明(16日・抜粋)「オンライン詐欺は、インターネットを通じて世界中の人々を標的とする社会全体の脅威です。
Metaでは人による審査と自動検知を組み合わせています。審査チームには日本語や日本の文化的背景、ニュアンスを理解する人員を備えています。
オンライン上の詐欺が今後も存在し続ける中で、詐欺対策の進展には、産業界そして専門家や関連機関との連携による、社会全体でのアプローチが重要だと考えます。
Metaとして、その中で役割を果たすべく注力する所存です」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年4月19日放送分より)
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