路線価は、1月1日時点で国税庁が算定した全国の主な道路に面した土地の1平方メートルあたりの評価額で、土地を相続したり、贈与を受けたりした際の税額を計算する基準となります。
ことしの路線価は1日に公表され、調査対象となった全国およそ32万地点の平均は去年に比べて2.3%上昇しました。
3年連続で前の年を上回り、上昇率も今の算定方法になった2010年以降で最も大きくなっています。
都道府県別の平均では29の都道府県で去年を上回り、上昇率が最も大きかったのは、
▽福岡県の5.8%
次いで、
▽沖縄県が5.6%
▽東京都が5.3%などとなっています。
路線価が全国で最も高くなったのは、39年連続で東京 銀座5丁目の『銀座中央通り』で、1平方メートルあたり4424万円と去年を152万円上回り、上昇率は3.6%でした。
国税庁はコロナ禍からの回復でインバウンド需要が好調なことや、全国的に再開発が進んでいることなどが要因となり、路線価を押し上げているとしています。
一方、国税庁は1月の能登半島地震による地価の下落を反映するため、被災地域ごとに調整率を定めて路線価を引き下げました。
対象は石川県と富山県、それに新潟県の全域で、
▽地盤の劣化や道路が壊れたことによる利便性の低下
▽鉄道の運休や幹線道路の通行止めといった経済活動の縮小などがあったとして、最大で45%、路線価を引き下げています。
これらの地域では、土地の相続税や贈与税も引き下げられることになります。
台湾企業進出で路線価上昇も
全国の税務署別の最高路線価の上昇率トップ5は、
▽1位が長野県白馬村で32.1%
▽2位は熊本県菊陽町で24%
▽3位が大阪市西区で19.3%
▽4位が岐阜県高山市で17.8%
▽5位が東京 台東区浅草で16.7%となっています。
上昇率全国トップの白馬村は、冬は良質なパウダースノーを求めるスキーヤーたちに、夏は登山を楽しむ人たちの拠点として以前から人気の高い場所ですが、コロナ禍からの回復で外国人観光客が増加し、宿泊施設などの建設が相次いでいるということです。
上昇率全国2位の熊本県菊陽町には、台湾企業で半導体の受託生産の最大手、TSMCが工場を建設し、半導体関連の企業の進出が相次いでいます。
町内の大型商業施設では、TSMCの従業員や家族などをおもなターゲットに、台湾のインスタント食品やお菓子などおよそ30品目を並べた台湾食材のコーナーを去年から設置しています。
また、引っ越しのあいさつ用や、ビジネスマンの手土産需要も増加しているということで、ギフトコーナーでの売り上げは以前の2倍近くに増加しているということです。
大型商業施設の原屋教利支配人は「企業の進出がきっかけで、台湾では熊本ブームも起きているようで、ツアー客の来店も増えています。従業員たちは台湾について学ぶ研修も受けていて、多くの人に喜ばれる店づくりを進めていきたいです」と話していました。
TSMCの進出の波及効果は、菊陽町の隣の大津町にも現れ、ファミリー向けの住宅建設などが進んでいます。
熊本市の不動産会社は、戸建ての住宅の販売や仲介を中心に手がけてきましたが、初めて賃貸用マンションの建設に乗り出しました。
地上12階建てのマンションはTSMCの工場から車で5分ほどの場所にあり、国内の投資ファンドなどからも問い合わせが相次ぎましたが、台湾企業に1棟まるごと、数億円の価格で売却することを決めたということです。
不動産会社の村上貴頼営業統括本部長は「TSMCの進出をビジネスチャンスとして捉え、今後も建設用地の確保を進めていきたい」と話していました。
路線価の推移 今後の見通しは
今後の路線価の推移の見通しについて、不動産市況に詳しいニッセイ基礎研究所の吉田資主任研究員は「コロナ禍から回復した社会活動と経済活動の正常化によって、基本的には地価の回復傾向が続くとみられるが、金利の上昇や、建築費用の高騰で住宅価格がさらに上がると、購買意欲を減退させて地価にも影響が及ぶことが考えられる」としています。
また、「日本は人口減少のフェーズに入るので、大都市中心部は引き続き商業活動が活発になり地価は上がっていくとみられるが、人口が減った地域の地価は下がっていき、格差が生じることが考えられる」と話しています。
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