互いの顔を見たことがない、全盲の姉と弟。その歩みと家族の絆を25年間にわたり記録した、テレビ静岡(静岡市駿河区)製作のドキュメンタリー映画「イーちゃんの白い杖(つえ) 特別編」が7月から、川崎市など首都圏で順次、上映される。(榎本哲也)

映画の一場面。(左から)唯織さん、弟の息吹さん、夫の横田さん=©テレビ静岡

◆「障害者を特別な人と感じさせず…」

映画の一場面。唯織さん(右端)と家族=©テレビ静岡

 取材班は本年度の日本記者クラブ賞特別賞を受賞。「障がい者を特別な人と感じさせずに、一緒に生きることを考えさせる。重いテーマなのに、見終わるとむしろ明るくなる」と評価された。作品は、世界の映像作品を審査・表彰する国際メディアコンクール「ニューヨーク・フェスティバル2024」の金賞も受賞した。  静岡県焼津市に暮らす、イーちゃんこと横田唯織(いおり)さん(33)=旧姓・小長谷=は生後7カ月で全盲と診断された。二つ年下の弟、イブちゃんこと小長谷息吹さん(32)も全盲で重い障害があり、食べることも歩くことも1人ではできない。

◆監督は父親が中途障害者、特別支援学校の教員免許取得

橋本真理子監督

 監督を務めた橋本真理子・テレビ静岡報道制作局長(53)は、唯織さんが8歳のころに出会い、撮影を開始。1999年と2010年にテレビ番組を作り、放送した。  最初の映画化は18年。きっかけは、相模原市の知的障害者施設で16年に起きた殺傷事件だった。「障害がある人にも生きている意味があることを伝えたかった」と話す橋本監督は、父親が中途障害者。大学では養護学校(現特別支援学校)の教員免許を取得している。

◆「白い杖を知らない人にも見てほしい」

映画の一場面。唯織さん(左)と弟の息吹さん=©テレビ静岡

 唯織さんは19年、同じく全盲の男性と結婚した。その花嫁衣装姿など新たな映像を加え、今回上映される「特別編」を製作。今年初め、フジテレビ系列で放送された。ナレーションは「笑点」の司会で知られる静岡市清水区出身の落語家、春風亭昇太さんが務めている。  「『白い杖』って何ですか?と聞かれることが、いまだにある」と橋本監督。視覚障害者のための白杖(はくじょう)を知らない人が、少なからずいる。「そうした人にも見ていただいて、元気をもらった、と思ってくれれば」  詳細はホームページで。    ◇   ◇     【おもな上映予定】 ◇7月6~12日(8日休映) 川崎市アートセンター(小田急線新百合ケ丘駅)
◇7月27日~8月2日 横浜シネマリン(JR関内駅など)
◇8月23~29日(27日休映) 宇都宮ヒカリ座(東武宇都宮駅)
◇上映日未定 シネマテークたかさき(JR高崎駅)
※日程は変更する場合もある。前売り券など問い合わせは各館へ 

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