7月3日発行の新1万円札の肖像となる実業家渋沢栄一は、個人の利益ではなく、社会全体を豊かにしようという志を生涯貫いた。出身の埼玉県深谷市では渋沢の精神を受け継ぐため、独自の教育を長年続けてきた。市担当者は「地元の偉人を知ることが、子どもの自信や誇りになる」と新紙幣に期待を寄せる。 「僕らのヒーロー…えい、えい、えい、栄一翁」。6月28日午前、深谷市立八基小の教室に、5年の児童18人の歌声が響いた。歌は卒業生らが制作。教室に設置したモニター越しに拍手を送ったのは、渋沢が開拓に携わった北海道清水町の小学生たちだ。 八基小は渋沢の長女穂積歌子が校歌を作詞するなど縁が深く、こうした学校間交流のほか、渋沢の家業だった養蚕や藍作り体験にも力を入れる。 深谷市は渋沢の精神を通じて、子どもが夢を掲げる「立志」と、思いやりを持つ「忠恕」の心を育んできた。2012年からは市内の全小中学校に副読本を配布。「社会への貢献」などをテーマに、福祉施設の運営や民間外交にも尽力した人物像を紹介する。
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