63年間(旧館を含む)、子どもたちに科学の面白さを伝えてきた川崎市幸区の東芝未来科学館が29日、一般公開を終えた。

 同館によると、一般公開終了を発表した5月下旬以降、見学の予約が急増し、この2週間は1日の上限(1千~1200人)に達する状態が続いていたという。今年5月末までの来館者数は計約1119万人。

 科学技術を体験的に学べるサイエンスゾーンでは、静電気を体験できるコーナーが子どもたちの人気を集めてきた。50万ボルトの静電気を通じたボールにふれると、髪の毛がふわっと立ち上がり、見ている人から笑いが起きる。

 川崎市多摩区の小学6年生、今津航希さん(11)は母の瑞穂さん(49)と一緒に体験した。海老名市に住む祖母(74)が外で見守った。航希さんはこれまで学校行事で何度か来ており、前に祖母と来たときはラジオをつくったという。今回は瑞穂さんが一般公開終了をニュースで知り、自身は来たことがなかったので予約した。瑞穂さんは「こういう体験で科学に興味を持つ子もいると思う。一般公開がなくなるのはさみしい」と話した。

 大型スクリーンの前で、キャラクターの動きに合わせて娘の智里さん(4)と踊っていた川崎市幸区の須江由紀子さん(44)は「無料で楽しめるのはとてもよかった。この子にもっと体験させたかった」と語った。

 東芝未来科学館は、東芝の事業内容が消費者向けから企業向けに移行したことを受けて、一般公開の終了が決まった。今後、東芝の家電製品などを展示したヒストリーゾーンが残るが、顧客やパートナー企業に限った公開となる。ただ、福家浩之館長は29日、一般公開終了を惜しむ声が多く寄せられているとして、ヒストリーゾーンについては東芝や川崎市の記念日、夏休み期間中の特定の日などに一般公開することを検討していると述べた。

 福田紀彦市長は28日、市役所で福家館長に感謝状を贈った。「私も、私の子どももお世話になった。川崎市民はみんな行くところ。学校では味わえない科学の楽しさを教えてくれ、夢を与えてくれた」と語った。(稲石俊章)

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