静岡県は27日の県議会6月定例会で、山梨県が今夏導入する富士山登山規制と同様の通行規制や通行料徴収の検討を始める考えを明らかにした。今夏は見送るが、来年度以降の導入に向け議論を進める。夜間の「弾丸登山」の防止や、適正な来訪者管理に向けた取り組みが加速しそうだ。

 山梨県は今月、吉田口5合目の県有地にゲートを設置。7月1日から山小屋宿泊者を除いて午後4時~午前3時と、1日4千人の上限を超えた時点で閉鎖する。1人2千円の通行料も徴収する。

 一方、静岡県は今夏から県内3ルート(富士宮、須走、御殿場)の登山者向けに事前登録システムを導入する。登山日程やルート、山小屋の宿泊予約状況などの事前登録を促し、午後4時以降の登山の自粛を呼びかける。運用を開始した10日から27日までに約1万3千人の登録があったという。

 しかし、強制力を伴わないため、この日の県議会で四本康久県議(ふじのくに県民クラブ)が「弾丸登山者の増加を懸念する声が上がっている」と質問。都築直哉スポーツ・文化観光部長が「山梨県と同様の手法による登山規制も一つの案として検討が必要」と答えた。

 ただ、県内ルートは8合目まで国有地のため、土地の借用などについて国と協議する。入り口が複数あるルートもあり、ゲートの設置場所や24時間態勢で係員を配置できるかなどに課題があるとしている。

 また、2021年の火災で焼失した富士宮口5合目の来訪者施設「レストハウス」を、元の場所に再建する方針も明らかにした。当初は元の場所から約200メートル東側に再建する計画だった。しかし、急斜面で地盤が強固なために難しいと判断したという。28年度の供用開始を念頭におき、今年度実施する地質調査などの結果を踏まえ、計画の見直しを進める。(青山祥子)

富士登山事前登録システム、スタッフが研修で確認

 富士山の登山者に対し、登山日程や山小屋宿泊の有無などを事前にウェブ登録する「静岡県富士登山事前登録システム」。この運用が今月から始まったのを受け、各ルートのチェックポイントで登録内容を確認するスタッフに対する研修会が27日、御殿場市で開かれた。

 富士山を巡っては、登山者の増加でトラブルや事故も問題になっている。参加した約50人は、実際に使う機器を手に取るなどして、登録システムを機能させるための流れを学んだ。

 座学では「今夏の富士登山について」や富士山保全協力金の状況、外国人対応の仕方などが具体的に説明された。

 実際に機器を手にとって使ってみる「ロールプレイング」も行われ、事前登録されたQRコードを読み取る機器を使っての実技や、外国人に対応するための自動翻訳機の操作、保全協力金を集める場所の施設を確認するなどした。

 参加者の一人は「実際にやってみないと分からない点もあるが、機器に関しては手にしたことで使えるようになったと思う」と話した。

 事前登録は富士登山オフィシャルサイトの県ページからアクセス。7月10日の静岡県側の山開きを前に、6月10日から運用が始まっている。県富士山世界遺産課の袖山菜津子さんは「しっかり周知をして多くの方に登録していただき、安全な登山、環境保全に活用していきたい」と話した。

 昨季の富士登山者は約22万1千人で、うち静岡県側3ルートからの登山者は約8万4千人。県では今季、約10万人の登山者を見込み、中でも円安を受けて外国人客が増えるのではないかとみている。(菅尾保)

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