「紀州のドン・ファン」と呼ばれ、2018年に死亡した資産家、野崎幸助さん(当時77)=和歌山県田辺市=が書いたとされる「遺言書」は、有効なのか。野崎さんの実兄ら親族が、「全財産を田辺市に寄付する」とした手書きの遺言書は無効だと訴えた裁判で、和歌山地裁は21日、「有効」とする判決を言い渡した。
野崎さんは生前、金融業などを展開。田辺市によると、遺産は預貯金や有価証券などで総額13億円以上ともされた。ほかに評価額未定の土地、建物、絵画などもあるという。
訴状などによると、遺言書は《いごん》《個人の全財産を田辺市にキフする》などと赤色サインペンで書かれており、署名と押印、13年2月8日の日付があった。野崎さんが経営していた会社の元幹部が保管していたもので、野崎さんの死後、その存在が分かった。
和歌山家裁田辺支部は18年9月、この遺言書が形式的な要件を満たしていると判断。19年10月、田辺市は相続を申し立て、受け入れ準備を進めていた。
今回の訴訟では、遺言書を「野崎さん本人が書いたかどうか」が争点となった。遺言を執行する選任弁護士側と、親族側は、それぞれ専門家に筆跡鑑定を依頼。執行人側の鑑定人が「本人が書いた」とする一方、親族側の鑑定人は「本人が書いたものではないことが強く推認される」とし、結果が割れていた。
21日の判決で、高橋綾子裁判長は親族側の請求を棄却し、全財産を田辺市に寄付するとした遺言書が有効だと判断した。
野崎さんは18年5月24日夜、自宅寝室で倒れているのが発見された。死亡から約3年後、元妻の須藤早貴被告(28)が殺人などの疑いで逮捕され、その後起訴された。殺人罪での公判は、まだ始まっていない。(伊藤秀樹)
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