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 路線バスの廃止や減便が相次ぐなか、過疎地の山中を走りながらも、世界中から利用者が押し寄せる“秘境の路線バス”。さらに「危険すぎて」運転手が音を上げるほどの“酷道”路線バスもありました。

■バス降りた先に…“日本三大秘湯”

乗客
「本当に山の緑を楽しめてありがたい」 徳島県三好市の山あいを走る四国交通の路線バス「祖谷(いや)線」。ここは1000メートル級の山々や、エメラルドグリーンの川に囲まれたまさに“秘境”と呼ばれるエリアです。 沿線では住民の過疎化が進み、かつては廃線の危機に。しかし、ダイナミックな自然を感じられる「祖谷渓谷」はいまや外国人の人気スポットに。 アメリカから来た人
「ここは祖谷渓谷が有名だから来てみたかったの」
「川のせせらぎも聞こえるし、とてもすてきね。私たちは日本の田舎が大好きなの」

イタリア人の乗客は、雄大な自然が織りなす絶景に大感激!

イタリアから来た人
「美しいわ。こういった場所を残すことがとても重要だと思うの」

祖谷線は、そんな秘境を2時間かけて走ります。

こちらは、4週間の日本旅行を楽しんでいる、オランダ人夫婦。

オランダから
夫 ハンスさん(28)
「ここは美しい自然がいっぱいでとてもハッピーだよ」 彼らのお目当てのスポットは、とある停留所のすぐ目の前。そこは、知る人ぞ知る隠れ絶景ポイント。V字に切り立つ祖谷渓谷を、高台から間近に見渡せるんですが…。 ハンスさん
「とても高いね。綺麗だよ」
「彼は“高所恐怖症”なの(笑)」 ハンスさん
「ちょっとだけね…」

すると、やってきたのはケーブルカー。これに乗ってある目的地に向かうといいます。

超急角度のおよそ170メートル降りた先にあるのは、“日本三大秘湯”の一つ「祖谷温泉」。

深い谷底にある、源泉掛け流しの露天風呂。ひとけのない温泉で、大自然との一体感を楽しめます。

ハンスさん
「ここは静かでいいね。僕らは日本でも混んでいない場所を訪れたかった。日本は大きなビルが並んだ人の多い街が多いからね」

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■「アドベンチャーな場所」でスリル満点!

■「アドベンチャーな場所」でスリル満点!

この日乗車してきたのは、東京在住、結婚11年目の中国人夫婦。

妻 チェンさん(50)
「行くこと決まったのもきのうでした(笑)」
「(Q.なぜ四国を旅行しようと思った?)主人がうどん好き(笑)」

思いつくままノープランで四国巡りを楽しんでいるという2人は、片時も手を離さない、ラブラブ夫婦。お目当てがありました。

チェンさん
「すごくアドベンチャーな場所」 それは、全長45メートルの吊り橋「かずら橋」。水面からの高さは14メートルとスリル満点。この地域の代表的なスポットです。 夫婦仲良く、手をつないでスタート!しかし、慎重に歩くあまり、手を離してしまった妻・チェンさん。すると、夫のジェンさん(51)、ひとりで行っちゃいました…。 チェンさん
「アハハハ。思ったよりは怖くなかったんですけど、筋肉は疲れました(笑)」

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■カレーお目当てに登山も…

■カレーお目当てに登山も…

山あいを進む祖谷線の終着駅は始発駅からおよそ2時間の「久保停留所」。しかし、ここで終着駅から別のバスに乗り継ぎ、さらに山奥へ進む乗客を発見しました。

和歌山から来たという、56歳の橋本さん夫婦。

夫 直樹さん
「バスでとにかく旅しようと思って。(車窓を)ずっと見てたら高いところにポツンと家が建ってたり、おもしろそうでね」 秘境を巡る路線バスの旅が大好きな夫婦。その目的地は、祖谷エリアのシンボルともいえる、標高1955メートルの「剣山」。

最近登山にハマったというご夫婦ですが、山の中腹までは登山リフトでひとっ飛び!

直樹さん
「登ることを思ったらちょっとラクですよね」

こうなると頂上までは40分ほどの道のり。ようやく、ここから登山スタートです。実は2人には、山頂でどうしてもやりたいことがありました。

直樹さん
「山頂で景色見て、時間あったらヒュッテ(山小屋)でカレーライスを」 絶景を眺めて食べる、極上カレーライス。しかしこの直後、思わぬ事態が発生しました。登山開始わずか10分ほどで、夫の直樹さん、さっそく息切れの様子。 妻 美紀さん
「休憩?早い!」
「(Q.奥さんは大丈夫?)全然、大丈夫です」

まったく息も切れていない妻・美紀さん。一方の直樹さんは、その後も進んでは休む、進んでは休むの繰り返し…。果たして大丈夫なのでしょうか?56歳の直樹さん、力を振り絞ります。

直樹さん
「あとちょっとや。あとちょっとですわ」

そして、登山開始から40分…。

直樹さん
「到着!やっと!うわぁスゴイ!来てよかった!」 四国の山並みを360度にわたって見渡せる、壮大なパノラマ。そしてお目当てのカレーライスですが…。 直樹さん
「おいしそうだったんですけどね。食べるのはあきらめました」 美紀さん
「(Q.あきらめた理由は?時間?)食べられない。疲れて…」

これには妻・美紀さんもご覧の表情。残念ながら、山頂でのカレーライスはお預けに。それでもお二人とも十分楽しんだ様子でした。

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■危険な道も「まるでジェットコースター」

■危険な道も「まるでジェットコースター」

この日、祖谷線に乗っていたのは、九州大学の留学生2人組。ずいぶん大きなリュックですが…。 ウクライナから ビタリーさん(30)
「僕らはテントや寝袋すべてを持ってきて、今晩も近くでキャンプするんだ」

秘境を探してはキャンプ生活を送っているという2人。観光スポットだけでなく、バスからの車窓すべてが魅力的だといいます。

東ティモールから イマクラダさん(28)
「いつも電車に乗る時は寝てしまうの。でもこの路線バスに乗ってたら寝られないわ。だってこんな感動的な景色が見られるのよ」 すると、突然バスがストップ。狭い道に対向車が来ていたんです。この路線ではこうした緊張感も一つの楽しみです。 ビタリーさん
「危険な道だね」 イマクラダさん
「曲がりくねって狭い道だから、まるでジェットコースターみたい!」

しかし、実はこの地域には、この路線以上に危険な道を走る路線バスがあるんです。

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■地元住民に寄り添う“過酷道”バス

■地元住民に寄り添う“過酷道”バス

山あいの細い一本道を走る「漆川(しつかわ)線」。バス運転手から、「この道がイヤと言って辞めた運転手が何人もいる」「私が知っているのでも(辞めた運転手は)3人くらいはいる」という声が聞かれるほど、バス1台が通るのもやっとの狭さです。 さらに続く、曲がりくねった山道。運転手も逃げ出す、過酷な路線バスです。 ひとたび対向車と遭遇すれば、バックしかありません。この時はなんと200メートル近く下がっていました。 バス運転手
「(Q.日本有数の過酷な道?)そう言うよ。みんなね」 漆川線の走る沿線は、高齢者が点在して暮らす過疎地。 乗客
「もう人間よりも猿やイノシシの方が多い」
「(このバスは)自分の足じゃけん、無かったらどうしようもないな」

この路線バスには地域に根付いた、こんなサービスもありました。こちらは街の中心地から乗った、買い物帰りの女性、すると…。

乗客
「すいません!お願いします」 バス運転手
「坂のところね」 乗客
「(Q.場所指定ができるんですね?)助かるんですよ。いつも『ここで』と言ったら降ろしてもらえるんで」

路線バスは、地元住民に寄り添いながら走っています。

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■生きがい支えるバス 運転手「少しでも話を」

■生きがい支えるバス 運転手「少しでも話を」

こちらの「(もうすぐ)92歳。ひ孫が7人おる」と話すおばあちゃんも、路線バスの常連客。

90歳を超えても、とってもお元気な近藤照子さん(91)。毎朝必ず行うというのが、長い廊下を全速力で5往復!健康長寿の秘訣なんだとか。

照子さん
「(友だちに)教えてもらったから。5回くらい走ったら一万歩走るより効果あるって」
「(Q.苦しくないですか?)そりゃ、ちっとは息苦しいわな。これぐらいが一番いいんだって」 農作業もこなす、元気おばあちゃんの照子さん。週1回、必ずこの路線バスを利用して“ある場所”に向かうといいます。 それが、地元の公民館で行われる「体操教室」。運動だけでなく、自宅にこもりがちな生活に、潤いを与えているといいます。照子さんの生きがいを、路線バスが支えていました。 照子さん
「外に出てると、こうやって顔を見られるから安心した。じゃあ、お大事に」
「そりゃあバスは大事、すごく。やっぱりバスがないとな。寂しいな」

そこへやってきた路線バス。

照子さん
「昨日寒かったけど」 バス運転手
「暖かくなったな」 照子さん
「服を脱がなアカン」 バス運転手
「ホンマじゃ」

運転手とのたわいない日常会話は、地域に根付いた路線バスならではの光景でした。

バス運転手
「ほなね!」 照子さんは、いつまでもバスに手を振ります。 バス運転手
「一人暮らし、一人で生活されよる方が多いので、少しでも話ができたらいいなって」

地元住民との絆をつないで、秘境を走る路線バスはきょうも過酷な山道を走っています。

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