山あいの国道沿いに、突如として直角に折れ曲がった廃橋が現れる。岩手県一関市厳美町の「旧祭畤(まつるべ)大橋」。地滑りによって崩落した。

 16年前の6月14日、ここから北へ1.5キロメートル、深さ8キロを震源とするマグニチュード7.2の地震が起きた。最大震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震だ。

 市などは橋を災害遺構として残すため、展望の丘を整備。被害を伝えるパネルや落ちた橋の一部を展示し、橋の近くに見学通路も造った。

 ただ、3年後に起きた東日本大震災の衝撃もあり、記憶と関心の風化は進む。地元の「いわいの里ガイドの会」は地震の脅威を伝えるため、災害遺構を巡るガイドを続けるが、昨年行ったのは2回ほど。同会の及川定一さんは「地元の人にすら、忘れ去られてしまっている」と嘆く。

 丘から橋を望むと、新緑の木々が、橋桁をのみ込むように生い茂っていた。(細川卓)

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