農林水産省が12日、都内で開いたコメの需給状況に関する意見交換会には、生産者や卸売業者、それに食品会社などが参加しました。
この中で農林水産省の担当者は、流通段階のコメの在庫は一定の水準を確保できているものの、JAグループなどが卸売業者に販売した去年産のコメの価格は、前の年より1割程度高くなっていることなどを説明しました。
また、卸売業者からは、価格が値上がりする中でも家庭向けの販売が順調なほか、インバウンド需要もあって外食向けの販売も好調だといったことが報告されました。
一方で、供給については、去年の猛暑の影響でコメの品質が低下したことから流通量が比較的少なく、卸売業者の間で必要な量を調達し合う「スポット」と呼ばれる取り引きでは、価格が高騰していて、特に低価格帯のコメは不足気味となっていることなどが説明されました。
会議のあと、参加した卸売業者は、「全体としては足りているが、一部の銘柄で在庫が少なくなっている。取引先の要望どおりのものは出せなくても、調整しながら売っていきたい」と話していました。
また、別の卸売業者は、「ことしは在庫が厳しく、新規の客には対応できない状況だ。新米も、引き合いが強く関係者一同で心待ちにしている」と話していました。
コメ 「スポット」ではさらに価格高騰も
コメの価格は、去年の記録的な猛暑が影響し、流通量が減っていることなどから、上昇しています。
JAグループなどが卸売業者に販売した去年産のコメの価格は、ことし4月の段階で、すべての銘柄の平均で60キロ当たり1万5526円と、前の年の同じ月より1600円余り、率にして12%高くなっています。
また、卸売業者の間で、比較的小さい単位で必要なコメを調達し合う「スポット」と呼ばれる取り引きでは、さらに価格が高騰しています。
取り引きの場を開いている会社によりますと、先月後半の段階で、「関東地方のコシヒカリ」は、60キロ当たり2万5958円と、前の年の同じ時期に比べて90%以上、値上がりしています。
農水省「全国的に見れば在庫はひっ迫している状況ではない」
コメの値上がりについて、農林水産省は、「去年の猛暑の影響で、一部の産地や銘柄で、コメの流通量が減っているが、全国的に見れば、在庫はひっ迫している状況ではないので安心してほしい」と呼びかけています。
専門家「冷静に対応を」
コメの生産や流通に詳しい日本国際学園大学の荒幡克己教授は、コメの価格の上昇について「全体の需給が引き締まっていることと、去年の夏の高温という2つが影響している」と指摘しています。
需給が引き締まっている背景として荒幡教授は、新型コロナの感染拡大による需要低迷などで、ここ数年、全国的に生産が抑えられたことが影響していると話しています。
一方で、去年の夏の高温の影響で、新潟県産コシヒカリをはじめ、一部の産地で、不作や品質の低下などが起きたほか、主に加工用に使われるコメが少なく、代わりに低価格帯のコメの引き合いが増えたことなどが、価格を押し上げていると説明しています。
そのうえで、「特に価格が高騰しているスポット取引は全体として見れば量が少なく、スーパーの店頭価格などは大幅には上昇していない。業者にとっても、目当ての銘柄が手に入らないということはあると思うが、代わりの銘柄を使うなどできるので冷静に対応してほしい」と話しています。
今後の見通しについては「8月から9月にかけてことしのコメの生育状況がわかり、『平年どおり収穫できそうだ』という見通しがつけば、相場も落ち着くだろう」と話しています。
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