◆2010年代前半までは対面が通例だった
入管庁からクルド人男性に送られてきた「口頭意見陳述は認めない」とする通知書(一部画像処理)
「口頭意見陳述を実施しない」。母国トルコでの迫害から日本へ逃れたというクルド人男性に昨秋、対面審査をしないとする通知が、入管庁から届いた。難民申請は3回目。今回不認定なら、家族と共に送還の恐れが強まる。「帰ったら危ないと自分で説明したかったのに」と憤る。 不服審査は入管庁の不認定決定に納得できない場合に実施する。同庁が識者から任命した難民審査参与員が3人1組で審理し、対面の必要性は事実上、入管庁が判断する。2010年代前半まで通例だった対面は、15年から減少。同年、一部の参与員が書類審査で裁決する「臨時班」を導入し、これを機に減ったことを示す。◆「対面を適正に」とした国会付帯決議は反映されず
臨時班での書類審査は昨年、改正入管難民法の国会審議でも問題となった。成立時、対面を適正に活用するとの付帯決議をした。だが、対面の件数は昨年も減り、実施率は14.8%にとどまる。 同性愛が違法のウガンダでの拷問から逃れた性的少数者の女性は、対面での不服審査が認められず、一次審査に続き難民不認定とされた。大阪地裁に訴えて昨年、認定されたが、書類だけでの入管庁の判断なら送還された可能性が高い。 参与員の北村泰三・中央大名誉教授は「本人の話を直接聞いてみないと分からないことも多く、対面がこれだけ少ないのは問題。態勢を抜本的に改めないと、本来難民となる人を危険にさらす」と指摘した。(池尾伸一) 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。