東京・秋葉原の無差別殺傷事件から16年となり、現場付近で手を合わせる男性(8日)=共同

2008年6月に東京・秋葉原の繁華街で7人が死亡、10人が重軽傷を負った無差別殺傷事件は8日、発生から16年となった。現場の交差点では多くの人が行き交う中、「凄惨な事件を忘れてはいけない」と祈りをささげる人の姿があり、花束や飲み物が供えられた。

茨城県古河市の男性会社員(45)はあの日、偶然現場に居合わせ、襲撃の様子を目の当たりにした。現場に献花して手を合わせ、「この日はこの場所に来ずにはいられない」と静かに語った。

救助に当たった愛知県豊明市の西村博章さんは手の中で冷たくなっていく血の感覚などが忘れられず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱えた。通院を続けるがこの日は体の震えを抑えながら毎年現場を訪れる。「亡くなった方の苦しみが少しでも和らいでほしい」と語った。

加藤智大元死刑囚のかつての同僚で友人の会社員、大友秀逸さん(47)も手を合わせた。毎年現場に足を運んでいるが「年々供えられる花が減ってきている」と風化を感じる。

遠方から犠牲者を思う人も。専門学校時代の同級生だった宮本直樹さん(当時31)を亡くした横浜市青葉区の会社員、秋山茂さん(46)は取材に「つらい気持ちでいっぱい」と胸の内を明かした。

この日が近づくたびに自分の気持ちがふさがり仕事が手に付かなくなる。宮本さんや事件への思いは変わらないのに「同僚ら周囲の事件への反応は薄い」と話した。

事件は08年6月8日午後0時半ごろに発生。当時25歳の元死刑囚がトラックで歩行者天国に突っ込み、通行人をはねた後、近くの買い物客らをダガーナイフで襲撃した。

元死刑囚は殺人罪などで起訴され、15年に最高裁で刑が確定。判決は「没頭していたインターネット掲示板で受けた嫌がらせに怒って犯行に及んだ」と動機を認定した。22年に刑が執行された。〔共同〕

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