千葉県の政策の検討過程などの重要な情報が記録され、永久保存の必要がある「歴史公文書」やその可能性がある県管理の公文書について、少なくとも139冊が誤廃棄もしくは所在不明の状態になっていたことがわかった。所在不明の歴史公文書の中には、被爆者の氏名や被爆状況、中国残留孤児とその身元引受人の氏名や住所、相談内容といった個人情報を含むものもあった。
県への情報公開請求や、取材で入手した県文書館作成の「所在不明・誤廃棄簿冊一覧」などをもとに朝日新聞が確認した。
東京五輪・パラリンピックや東日本大震災関連も
県は公文書管理法の趣旨に沿った判断基準に関する要綱に基づき、原則として保存期間が5年以上で、県の歴史や県民の権利、戦争など重要な情報が記録された公文書の簿冊を「歴史公文書」として県文書館に移管し、永久保存している。
2018~22年度に保存期間が満了する公文書について、県文書館が県の各所属に確認したところ、「誤廃棄」または「所在不明」(一部不明を含む)と確認した公文書が計139冊あった。これらはすべて歴史公文書であるか、その可能性があるという。
県内に競技会場があった21年の東京五輪・パラリンピックの準備段階からの経緯がわかる公文書「東京オリンピック・パラリンピックアスリート強化・支援事業」や、「東日本大震災千葉県記録映像教材」の一部も所在不明になっていた。
公文書の適正な取り扱いを巡っては、11年施行の公文書管理法が政府機関を対象に、公文書の保存や管理、廃棄などについて基本的な考え方やルールを示す。自治体は対象外だが、地方公共団体に対しては条例や規則など必要な施策の策定を求めている。
公文書管理条例がない千葉県
ただ、県には県行政文書管理規則や歴史公文書に関する要綱などはあるが、公文書管理条例はない。公文書の管理を所管する県政策法務課は取材に、「職員に文書管理の意識を浸透させられなかった」として、早急に対策をとる必要があるとの認識を示した。
東京都などの公文書管理委員会の委員で、弁護士の東洋大学法学部・早川和宏教授(行政法)は、「個々の役人にとって、公文書は目の前の仕事のためのものであり、保存する意識や歴史になるかもしれないという認識は薄くなりがちだ。公文書を管理する条例があれば、内容次第で管理状況を審議会に出したり、報告を受けた知事が県民に知らせたりすることになる。条例を制定し、しっかりとした監査・チェックの仕組みを作ることが必要だ」と話す。(原口晋也、マハール有仁州、田辺詩織)
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