北海道奈井江町の猟友会が、町から依頼されたヒグマ駆除などへの協力を人手不足や報酬の低さを理由に辞退した。ヒグマ被害が増える中、多くの猟友会が高齢化や人手不足に直面しており、市町村が猟友会に対策を一任する仕組みの限界も指摘される。専門家からは自治体内に鳥獣対策の専門職を置くべきだとの声が上がる。
同町は猟友会奈井江部会に、出没地の見回りから箱わなの設置、駆除と死骸の解体まで含め、最大1万300円の報酬で協力を求めたが、猟友会は5月、辞退した。
猟友会の山岸辰人部会長(72)によると、ヒグマに最前線で向き合うことになる部会の会員は男性5人で、うち3人は70代だ。介護施設で働く人もいて出動時は仕事を休む必要がある。
問題を抱えるのは奈井江部会だけではない。室蘭支部は約80人のうちクマを駆除できる熟練のハンターは6人ほど。62人の江差支部でも15人ほどで、管轄5町をカバーするには手薄だ。
酪農学園大の佐藤喜和教授は、猟友会頼みのヒグマ対策が転換期を迎えていると指摘。駆除やモニタリングのほか、猟友会との調整、住民の啓発も担う「ガバメントハンター」を市町村に置くことを提案する。
北海道占冠村では、2018年から浦田剛さん(46)が野生鳥獣専門員として活動。駆除に加え、村内を巡回してクマの痕跡を確認し、猟友会や住民と情報を共有する。住民の学びの場である「ヒグマミーティング」や広報誌発行も仕事の一部だ。
浦田さんは「クマの特性や住民の要望を具体的に把握することが重要」と、調整役がいることの意義を強調する。
環境省によると、35道府県が鳥獣保護管理の専門人材を置くが、駆除までを担う例は少ない。
11年に専門人材を置き、先行例とされる長野県小諸市では、専門員を務めた人が退職して鳥獣対策会社を立ち上げ、市と連携する。仕事を引き継いだ農林課事務主任、桜井優祐さん(39)は、高齢の猟友会員が捕獲した大型鳥獣を運べない場合や、若手ハンターが日中は仕事で出動できないことがあると指摘し、猟友会と自治体が補完し合うことで「迅速で安定した対応ができる」と語った。〔共同〕
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。