2023年7月、札幌ススキノのホテルの一室で当時62歳の男性の遺体が見つかり、田村瑠奈被告(30)、父親の田村修被告(60)、母親の田村浩子被告(61)の親子3人が逮捕・起訴された事件。
約1年が経過し、死体遺棄ほう助、死体損壊ほう助で起訴されている母親の田村浩子被告の初公判が6月4日午後3時から札幌地裁で開かれます。
■起訴内容から見えてくる”3人の役割分担”
起訴状によりますと、逮捕された3人のうち殺害の実行役である瑠奈被告は2023年7月、札幌ススキノのホテルで男性の首などを折りたたみナイフで複数回突き刺して殺害後、のこぎりなどを使い首を切断。ホテルからキャリーケースに頭部を入れて持ち去り、自宅で刃物を使って頭部から皮膚などをはぎとった殺人などの罪で起訴。
父親の修被告は事前に瑠奈被告と一緒にのこぎりやキャリーケースなどを購入し、瑠奈被告をホテルまで送迎。その後、瑠奈被告が男性の頭部を損壊する様子をビデオ撮影した殺人ほう助・死体損壊ほう助などの罪で起訴。
母親の浩子被告は瑠奈被告が持ち去った頭部を自宅に隠すのを容認し、瑠奈被告から頭部を損壊する様子をビデオで撮影したいと求められ、修被告に撮影を依頼し損壊する様子を撮らせた死体遺棄ほう助・死体損壊ほう助の罪で起訴されています。
■両親は関与を否定
2023年8月から3人の刑事責任能力を調べる約半年間に及ぶ鑑定留置が実施されました。
9月に札幌簡易裁判所で修被告と浩子被告の鑑定留置理由開示手続きが行われ、2人は「やっていません。事件後に家に帰ってきて、初めて知りました」と話し関与を否定したということです。
そして2024年3月、札幌地検は3人全員を起訴しました。
瑠奈被告と修被告は裁判員裁判となり、裁判の予定は未定です。
■いよいよ母親・浩子被告の初公判…争点は
事件から約1年が経過し、6月4日に札幌地裁で母親の浩子被告の初公判が開かれます。
元検事の磯部真士弁護士は、浩子被告が瑠奈被告の犯罪を精神的・物理的に援助したことにより瑠奈被告の実行行為を容易にさせた「ほう助罪」で、長くても懲役1年半で執行猶予がつく可能性があると指摘。
また裁判では、そもそも浩子被告がほう助罪といえるほどのことをしているのか、事実関係が争点になる可能性が高いと予想。
「(瑠奈被告から依頼されたビデオ撮影について)夫の修被告に依頼したということならば、間接的な対応になるので、積極的に関与していないというスタンスでいくのでは」
浩子被告の初公判は6月4日(火)午後3時から札幌地裁で開かれます。
■ススキノホテル殺人・頭部切断事件 経緯
<ススキノホテル殺人・頭部切断事件 経緯>
※起訴状、警察・捜査関係者などへの取材に基づく
■2023年5月下旬
・父親の修容疑者が車で娘の瑠奈容疑者をススキノに送る
→ダンスクラブで瑠奈容疑者が被害男性と出会う(初めてか)
・修容疑者もダンスクラブにいた 事件前から被害男性と面識があった可能性
この時に”何らかのトラブル”か
■2023年6月上旬
・瑠奈容疑者と被害男性が会う(2回目か)
■6月19日から7月1日午前2時ごろまでに
・瑠奈容疑者と修容疑者 自宅近くの小売店でノコギリやナイフなど複数の刃物のほか、スーツケースなどを買いそろえる
・修容疑者 1人で札幌市内の店でレインコートを購入
■7月1日午後8時ごろ
・瑠奈容疑者と修容疑者 自宅近くの小売店でノコギリを追加購入
■7月1日夜~2日未明
・修容疑者が車で瑠奈容疑者をススキノへ送る(その後、修容疑者は一度勤務先へ)
→ススキノで瑠奈容疑者と被害男性が合流 ホテルへ
→レインコートを着た瑠奈容疑者が、浴室で男性を後ろ手に拘束し、抵抗できない状態で後ろから首付近を刃物で突き刺し殺害か。致命傷は肺の近くまで達する深い刺し傷 死因は出血性ショック
→殺害直後に、ホテルで男性のスマートフォンを工具で壊し、証拠隠滅を図ったとみられる。複数の刃物で男性の首を切断し持ち去る
・修容疑者が車で瑠奈容疑者を迎えに行く
→一緒に厚別区内の自宅へ帰る
・数時間後、修容疑者が車で瑠奈容疑者をふたたびススキノに送る
→瑠奈容疑者は別のダンスクラブへ
■7月2日午前2時すぎ~同日午後3時ごろ
・3人のスマホを調べたところ「すすきの 殺人」と検索した履歴
■7月24日
・警察が死体損壊、死体領得、死体遺棄の疑いで瑠奈容疑者と修容疑者を逮捕
■7月25日
・警察が死体損壊、死体領得、死体遺棄の疑いで浩子容疑者を逮捕
■家宅捜索
・容疑者3人の自宅から被害男性の首、衣服、免許証、財布など、修容疑者の車から男性のスマホのSIMカードが見つかる。
→男性の首は2階の浴室でビニール袋に包まれ容器に入って腐敗した状態だった
・刃物約20本や金髪ウィッグなどのほか”何者かが手袋を着用した手で男性の頭部に触れる動画”なども押収
・瑠奈容疑者のスマートフォンも押収。電話やアプリなどで男性とやり取りをした形跡はなかった。
・血痕のようなものが付いたレインコートを押収
■8月14日
・殺人の疑いで瑠奈容疑者、修容疑者、浩子容疑者を再逮捕
→瑠奈容疑者が殺人の実行役とみて、3人の関与の仕方や計画性があるかを慎重に捜査
■8月16日
・殺人の疑いで瑠奈容疑者、修容疑者、浩子容疑者を送検
■警察の取り調べに対し…
・死体損壊などの容疑については3人とも黙秘
・殺人容疑について3人は黙秘や否認
・浩子容疑者は当初、「娘の犯行を止めたかったが止められなかった」と供述
■8月18日
・両親の弁護人がコメントを発表
買い物や送迎の事実は間違いないが、浩子容疑者が「娘の犯行を止めたかったが止められなかった」と警察に話した事実は一切ない。両親は、瑠奈容疑者が事件を起こすなどとは全く想像しておらず、殺人と死体遺棄について一切共謀していない、とコメント
■8月24日
・札幌地検が親子3人の鑑定留置を請求し、同日札幌簡裁は請求を認める決定
・両親の弁護人がふたたびコメントを発表
両親は8月21日から検察に対してのみすべての事実関係を供述しているが、弁護方針として警察に対しては黙秘権行使を続ける。
■8月25日
・両親の弁護人が半年間の鑑定留置を不服として、札幌地裁に取り消しを求めて準抗告を申し立てるも棄却される
■8月28日~2024年2月28日
・札幌地検が親子3人の鑑定留置を開始 半年間、3人の刑事責任能力を調べる
■両親の話(弁護人への取材)
<修容疑者>
・事件前に瑠奈容疑者と購入した刃物について 「娘は趣味でナイフを集めていて違和感はなかった。のこぎりは木やベニヤ版を切るのが好きで買っていた」という趣旨の話をしている
・7月1日夜に瑠奈容疑者をススキノに送ったことについて 「娘から男性と遊びに行くと聞いていた」と話す
<浩子容疑者>
・「(以前、娘が嫌な思いをしたので)男性と会ってほしくなかったが、止められなかった」という趣旨の話をしている
<2人>
・「娘が事件を起こしたのは、後で知った。計画は知らなかった」という趣旨の話をしていて、共謀を否定。
■9月1日
・札幌簡裁で鑑定留置開示理由手続きが開かれ、両親が「やっていません。事件後に家に帰ってきて、初めて知りました」と事前の共謀を否認。両親の弁護人も共謀を否定した上で「両親ともに責任能力に問題はない。半年間に及ぶ鑑定留置を行う必要がなく、簡易鑑定を行うべきで、1週間あれば十分」などと主張。
→両親の鑑定留置を9月8日までに短縮するよう求める
■2024年2月28日
3人の鑑定留置が終了
■2024年3月6日
・田村瑠奈被告
→殺人、死体損壊、死体領得、死体遺棄
・田村修被告
→殺人ほう助、死体損壊ほう助、死体領得ほう助、死体遺棄ほう助
・田村修被告
→殺人ほう助、死体損壊ほう助、死体領得ほう助、死体遺棄ほう助
・田村浩子被告
→死体遺棄ほう助、死体損壊ほう助
(殺人については不起訴)
親子3人全員が起訴される
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