宇都宮市中央消防署(大曽2丁目)には栃木県内唯一の「高度救助隊」がある。今年4月、そこで初の女性隊員が誕生した。消防副士長の青木真奈美さん(27)=市内在住=だ。人命救助の高度な専門知識を持ち、国際協力機構(JICA)の医療チームメンバーにも仮登録されているため、海外での活動も視野に入る。
中央消防署の高度救助隊は、8人一組の2班で構成されている。班内でローテーション勤務をし、5人で救助工作車(消防車両)に乗り活動する。
隊が駆けつけるのは、普通の消防士や、他の消防署で対応できないような現場。扱う資機材は専門的な知識が必要だ。高校生ら8人が亡くなった2017年3月の「那須雪崩事故」でも応援に行き、捜索活動をした。
青木さんが隊員になったのは今年4月。初出動は同月上旬だった。宇都宮市中心部・オリオン通り近くの高層ビルの上部で午前0時ごろ、外壁から防水用シートがはがれた。分厚く、重さは100キログラムほど。落下すれば、路上の歩行者に危険が及ぶ恐れがあった。
119番通報を受け、現場に向かった。問題となったシートをロープで縛り、落下しないように処置をした。
出身は千葉県野田市だ。看護師の母が働く姿を見て、命を助ける仕事をしたいと思った。自分から困っている人を助けに行く消防士を志した。
高校卒業後に1年間、公務員になるための勉強をした。関東近郊の複数の自治体で消防士の採用試験を受け、合格通知を受け取ったのが宇都宮市だった。16年4月、市消防局の消防士となった。
市消防局の職員は計468人。このうち現場の消防士として働く女性は、青木さんを含め6人。全体の1.3%に過ぎない。
青木さんの身長は151センチと小柄だが、自他共に認める「負けず嫌い」だ。学生時代はバスケと陸上をしていた体力自慢でもある。
22年9月、県内各地の消防署の「優秀な人材」が集まる県消防学校の専科教育「救助科」に入校し、火災や交通事故での救助を想定した訓練を受けた。翌月修了し、「救助隊員」の資格を得た。
救助の分野を専門に選んだのは、「一番最初に傷病者を助けに行ける。火災や交通事故の現場の最前線で活躍できると思った」からだ。
現在は、JICAの「国際緊急援助隊」で医療チームのメンバーにも仮登録されている。海外の災害現場にも派遣される可能性があるということだ。
「自分より救助の経験を積んでいる人が周囲にいる。追いつけるように努力したい。同僚からも市民からも信頼される高度救助隊員になりたい」(山下龍一)
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