海の高級食材を狙う悪質な密漁者を追跡しました。
■悪質な密漁は許さない!検挙の瞬間
日本の海産物を守る最後の砦、海上保安庁。逃げているのはナマコの密漁者たちです。悪質な密漁は決して許しません。 追跡取材班が向かったのは、房総半島。今の季節、高級食材のイセエビや大きな身が詰まったサザエ、ハマグリなど、海の幸の宝庫です。この貴重な海産物を密漁から守るのが、勝浦海上保安署の保安官たちです。この日も出動し、取り締まる海岸はおよそ30キロにも及びます。
ある海岸に到着しました。注意の看板があるにもかかわらず、潮が引く日には密漁が横行するといいます。 日本のほとんどの沿岸部では漁業権が設定され、対象の貝や海藻、イセエビなどを密漁した場合、漁業法により100万円以下の罰金が科されます。 保安官たちも行動開始。服装は、目立たないようにレジャー客を装い、リーダーの勝浦海上保安署・内田裕之警備救難係長の指示の下で、違反者を発見する担当と証拠をカメラで抑える担当に分かれてパトロールします。すると、ある男性の動きに目を止めました。動きや服装などから、漁師ではないと判断。保安官が向かいます。
保安官「こんにちは。海上保安庁です。持ち物を見せていただいてよろしいですか?漁師の方?」 男性
「ではない」 保安官
「これ何をとったの?」 男性
「あの…ウニ」
日本語を話しますが、出身は中国だという男性。袋を開けると、大量のウニが次々と。その数、実に23個。他にも、サザエが1個と、トコブシが2個入っていて、8000円相当です。
この場所でウニやサザエを無断でとった場合、密漁となります。
保安官「これ何するためにとった?」 男性
「興味があって」 保安官
「持ち帰ってどうするつもりだったの?」 男性
「いや、これは持ち帰るつもりはないです」 保安官
「ここまで持ってきて『持ち帰るつもりがない』というのはおかしい。何回かとったことある?」 男性
「ないです、きょう、今年が初めて」
「たまたま拾っただけ」と言いますが、男性が持っていたものに保安官が気付きます。プロの漁師が貝をとるために使用する「磯がね」という道具です。
保安官「この道具とか、よく知っているね」
「これどうやって手に入れたの?」 男性
「オンライン(ショップ)」 保安官
「食べようと思って、持って帰ろうとしていたよね?」 男性
「そうです」
漁業法違反として検挙されます。この後、取り調べを受けますが、100万円以下の罰金の可能性があります。
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■漁協にとって死活問題「外国人による密漁」■漁協にとって死活問題「外国人による密漁」
全国的に密漁の検挙件数は増加しています。コロナ禍が明け、千葉県内ではサザエやイセエビなどを大量にとる悪質なケースも多いといいます。 東京に近い潮干狩りで人気のふなばし三番瀬海浜公園では、ゴールデンウィークには多くの人たちでにぎわっていました。有料の潮干狩り場が盛り上がりますが、隣接する漁業権が設定されたエリアは、アサリやカキをとることが禁止されています。
注意の看板や沖合付近にはポールが立てられ、「密漁禁止」と外国語でも書かれた横断幕があるにもかかわらず、主に外国人による密漁が絶えないといいます。
漁協では稚貝を長年かけて育てていて、密漁はまさに死活問題です。 船橋漁協 中村繁久組合長「それをとって生計を立てている人にとってはマイナス、痛手になります」
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■中国語が話せる保安官もパトロール■中国語が話せる保安官もパトロール
先月27日、海上保安部・警察・漁協が大規模なパトロールを実施しました。海には巡視艇も。パトロール開始から5分、明らかに杭よりも先の禁止エリアに人影が確認されました。巡視艇から「こちらは貝をとってはいけない場所ですので、とった貝は海に返して」と呼び掛けられますが、全く反応がありません。
そこで、保安官たちはひざ下までつかるなか、現場へ向かいます。
海上保安庁「海上保安庁ですけど、日本の方ですか?日本語は話せますか?」 中国人女性
「話せません。とってはいけないの?」 海上保安庁
「そう、漁業権があるからです」 中国人女性
「とってはいけないなら帰ります、大丈夫です」 海上保安庁
「貝類はとってはいけません」
今年4月から中国語が話せる保安官もパトロールに加わっています。
中国出身の夫婦だという男女がとっていたのはカキで、密漁になります。
「ちょっとだけなら…」 海上保安庁
「全部ダメです」
それでも…。
中国人女性「ちょっとだけならいいでしょ!」 海上保安庁
「ダメです。全部戻してください」
すると男性が…。
中国人男性「戻そう、戻そう、もういいよ」 海上保安庁
「全部戻してください」
女性は歩きながらポイ捨てをしてしまいます。
中国人男性「すみませんね」
禁止エリアに気付かなかったという中国出身の男女に対し、漁業権があることを伝え、立ち退かせます。
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■SNSで拡散…中国出身者による密漁増加■SNSで拡散…中国出身者による密漁増加
千葉海上保安部によると、ここ数年増えているのが、中国出身者による密漁です。実は今、中国のSNSでは「潮干狩り」と称し、日本での密漁と思われる動画が拡散されています。動画には「日本で潮干狩り体験」と書かれています。
特にアワビやナマコなどの密漁は「3年以下の懲役または3000万円以下の罰金」と罰則が強化されていますが、動画やとった場所の情報まで投稿されています。
館山市と思われる動画には、「岩の隙間に何匹ものイセエビが隠れているのを発見。本日の成果を見せます、イセエビです。アワビもあります」と中国語で投稿されていました。
日本で潮干狩りをしたというイセエビの写真の投稿には…。 通訳スタッフ「『こっそりとって食べたら違法ですよ」という(投稿者への)書き込み」
それに対し、画像の投稿者は「じゃあ捕まえに来なよ」と返信しました。
浜に来ていた中国人男性は、禁止エリアには入っていませんでしたが、「ネットで見た。TikTokとか。ここの住所とか出てくるので、それで来た」と話しました。
こうした動画の拡散については海上保安庁でも把握し、問題視しています。
勝浦管内で検挙した密漁の写真には、大きなイセエビが10匹も写っています。この時期、特にイセエビの被害が多くなるといいます。 勝浦で50年以上 イセエビ漁師「漁獲量にも影響してくるし、そういう人(密漁者)が釣っていると情報が拡散して、ワッと増える。やっぱり憤慨ですよね」
漁港は立ち入り禁止で柵もありますが、密漁者たちは…。
イセエビ漁師「みんなこうやってくぐっていくわけ。こっちも漁場だけどね、下にイセエビがいるわけ」
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■海上保安官“日本の海産物を守る戦い”■海上保安官“日本の海産物を守る戦い”
午後10時、密漁者が多いのは、夜の闇に紛れているからです。海上保安官は監視を始めます。その時、立ち入り禁止区域で海面を照らす怪しい光が…。男性に保安官が接近します。
保安官「こんばんは。海保です。なんか下を照らして」 男性
「何かいるかなと思って」 保安官
「何がいた?」 男性
「カニがいたから、とれるかなと思って」 保安官
「分かっていると思いますが、イセエビとか」 男性
「やらない。リスクがデカすぎる」
密漁はしていませんでしたが、立ち入り禁止区域への侵入が見つかりました。注意して立ち退かせました。
イセエビは岸壁や岩の間に潜んでいるため、岸壁を照らす釣り人を注視します。すると、立ち入り禁止区域で怪しい光が…。
イセエビを狙っているのでしょうか?確認するため、保安官が気付かれないように近付くと…。 保安官「日本語じゃない。日本人じゃない」
「イセエビとっていた?」
「はい」
保安官が近付きます。
保安官「こんばんは。海上保安官なんですけど、これ何?イセエビ?」 男性
「はい」
釣りバケツには、イセエビが入っています。すると、中国出身だという男性がいました。
男性「リリースします」 保安官
「なんでリリースするって言うの?」 男性
「ダメだから」 保安官
「ダメって分かっててとったんでしょ?だからすぐリリースするって言った」 男性
「そうですね」 保安官
「とっちゃダメ。分かってるもんね」 男性
「すみません。気を付けます」
イセエビの密漁は、100万円以下の罰金の可能性があります。
男性「いやもう怖いな。どうしよう。罪としては1匹も10匹も同じ?」 保安官
「関係ない」
釣れたイセエビは2500円相当。男性は漁業法違反として検挙され、取り調べを受けることになりました。
日本の海産物を守る海上保安官の闘いは続きます。
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