大阪・関西万博会場の建設現場で、3月の爆発事故と別の工区でも低濃度のメタンガスが検出されていたことが分かった。爆発事故の際、日本国際博覧会協会(万博協会)は「他のエリアでは可燃性ガスの発生はない」と説明していた。1日最大約23万人の来場を見込む巨大イベントを運営する組織のリスク管理、情報公開に問題はないのか。(宮畑譲)

◆最大濃度は7% 「工事は継続」

 「メタンガスデータの検出について」。こう題するニュースリリースを万博協会が発表したのは5月30日。「パビリオンワールド(PW)工区」の4カ所から検出されたという。木造巨大屋根「リング」やパビリオンが建てられる工区で、会場の中心部分と言える。

大阪・関西万博の会場建設が進む大阪湾の人工島・夢洲。奥は建築が進む木造の大屋根(リング)=2024年3月撮影

 検出された最大濃度は7%で、労働者の退避、火気の使用停止などを行う爆発下限濃度30%を下回っているため、工事は継続するという。  不可解なのは、3月28日にメタンガスによる爆発事故が起きた際、他のエリアで可燃性ガスの発生はないと説明していた点。爆発事故現場は廃棄物を処分した場所のためガスが発生していたが、他の工区はしゅんせつ土砂や建設残土で埋め立てているからガスは出ないという説明だった。  万博協会によると、3月の事故を受けて、測定しているデータを確認した際は確認できなかったが、再検証したところ、検出されていることが分かったという。取材に対し、「地表付近の埋め立てガスの発生の可能性は低く、発生しても危険性が低い濃度だと考えている」と答えた。

◆「一般の人が使える状態ではない。みんな分かってるはずや」

 「しゅんせつ土砂というが、奇麗なものではなくドロドロの汚泥。建設残土だってごみが全く入ってないと言えるかは疑わしい。ガスが出ないわけないやん」  会場となる人工島・夢洲(ゆめしま)の地盤を情報公開などで調査し、問題視している市民団体「おおさか市民ネットワーク」(大阪市)の藤永延代代表はあきれる。3月の現場については、以前から爆発の可能性を指摘してきたが、今回の工区についても「メタンガスに限らず、有害なガスが抜けたとは思えない。一般の人が使える状態ではない。みんな分かってるはずや」と吐き捨てる。

大阪・関西万博の会場建設が進む大阪市の人工島・夢洲=2024年3月撮影

 市民団体「夢洲カジノを止める大阪府民の会」の山川義保事務局長は「議会などのチェック機能が働きにくい政治状況が影響している」とみる。夢洲は大阪市内にあるが、「市長は大阪維新の会所属。市議会も維新が過半数を占め、『万博の問題を究明せよ』という声は高まらない。チェック機能がまひした状態で進められている」と話す。

◆「国益」を意識して? リスクを過小評価する人たち

 3月の爆発事故が起きた当初は、床の一部が損傷したとしていた。それが、5月に入り、破片で天井が破損したことなどが公表された。施工者が未報告だったとして、万博協会は「隠蔽(いんぺい)ではない」と釈明するが、情報を小出しにしているようにも見える。こうしたリスク管理の組織が巨大イベントを運営することに問題はないのか。  危機管理コンサルタントの白井邦芳氏は「延期や中止になれば、大阪府市だけでなく、国益への影響もあるからか、リスクを過小評価している。しかし、現状では、さらにマイナスの情報が出ることしかイメージできない。このままでは、パビリオンが来ないなど海外から見放されかねない」と分析した上で、開催中止の可能性にも言及する。  「開催まであと1年もない。情報の公開の透明度を担保し、調査をスピードアップするなど、抜本的に今の対応を変えなければ、開催中止のリスクを断ち切ることはできない」 

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