運転手の時間外労働時間が規制される『2024年問題』で、人手不足が深刻化しています。 ドライバー不足が、修学旅行にも影響しています。
■バス業界のドライバー不足 学校行事に影響
5月中旬、SNSに「中学校の修学旅行がピンチ。貸し切りバスが手配できなかったんだと。来週なのに…」という投稿がありました。
投稿者が旅行会社から配られたという、保護者宛ての書面には、『ドライバー不足と時間外労働の上限規制により、バス会社から断りの連絡があった』と記載されていたということです。 経緯について番組で、この書面を配布した近畿日本ツーリストに話を聞きました。当初、新大阪から奈良までのバスを確保していたが、スケジュールの変更で出発地が京都になり、その後、複数のバス会社に京都発のバスを依頼したが確保できず、在来線を利用することになったということです。 近畿日本ツーリストの担当者は、
「観光業界全体として、人手不足の影響が懸念される中、お客様の旅行に支障が出ないようあらかじめ代替のルートや交通手段を用意しておくなど、今後も誠心誠意対応していきたい」としています。 他にも、富山地方鉄道では、修学旅行のバスドライバーを確保するため、5月10日〜17日の間、高速バスなど計60便を運休しました。 会社側は、高速バスを予約していた約20人に、他の便への変更や払い戻しの対応をとったということです。 富山地方鉄道の担当者です。
「修学旅行の予約を受けた2年前は、他のバスの運行に支障はないはずだった。しかし、4月から時間外労働に規制ができたことで、運転手の確保が難しくなり、高速バスを運休せざるを得なくなった」といいます。 小学校の行事にも影響がでています。今年2月、北海道札幌市内の小学校のスキー学習がドライバー不足でバスを確保できず、数日前に中止になりました。 スキー学習の中止を受けて、児童の母親は、
「コロナでいろいろ制限され、我慢してきた中でようやく行ける状況になったのに、今度は大人の事情で小学校のせっかくの思い出作りが無くなるなんて…。寂しいというか、かわいそう」と話しています。 次のページは ■トラック追突で死亡事故「風邪薬を飲んで運転した」
■トラック追突で死亡事故「風邪薬を飲んで運転した」
運転手への負担が原因かどうかはわかりませんが、トラックの追突で死亡事故が起きました。
5月14日の午前7時半すぎ、埼玉・戸田市の首都高速でトラックが乗用車に追突して7台が絡む事故が起きました。
3人が死亡し、2人がけがをしています。 追突したトラックを運転していた男が、過失運転致死の疑いで逮捕されました。
運転していた降籏容疑者は、
「2キロくらい前から眠気を感じた。数百メートル前から記憶がない」と話しています。
事故の前日には、39℃近い高熱と頭痛があり、鎮痛剤を服用。 事故の当日も体調が悪く、職場に向かう途中で、鎮痛剤を買って飲んだということです。
降籏容疑者は、
「(仕事への責任感から)仕事は休めない」と話しています。
「運転中も頭痛がした。高速を降りて休憩することもできたが、仕事を終わらせたい一心で無理をした」と話しています。
警視庁は、体調や薬の服用の影響で、運転中に突然意識を失った可能性もあるとしています。
運転中に要注意の薬です。一部の、風邪薬、鎮痛薬、せきどめ薬、胃腸薬、花粉症の薬、血圧降下薬などの飲み薬や座薬などでは、眠気や注意力の低下などの副作用があるものもあります。 ●市販薬は、パッケージや添付文書の注意書きを確認してください。
●処方される薬については、医師や薬剤師から注意があります。
池袋大谷クリニックの大谷先生によると、
「不安がある場合は、服用前に、医師や薬剤師に相談をして下さい」とのことです。
運送会社は「『体調が悪く運行できないならば、時間に関係なく連絡するように』としているのでその認識だったが、降籏容疑者から連絡がなかった」として、運行を中止しませんでした。 事故当日は、『降籏容疑者が予定よりも早く出発したため、通常は行う体調確認ができなかった』ということです。
運送会社は、
「代わりの人員を用意できていたので、ドライバーを差し替えることになれば対応できた」と説明しています。
■トラックドライバー 働き方の現状
物流の『2024年問題』の現状です。
年間の労働時間は、全産業平均の2112時間と比べて、トラックドライバーは2512時間と、約2割長くなっています。 主な要因は、長時間の運転、荷待ちの時間、積み込みなどです。
2002年は27億5100万個でしたが、2022年は50億600万個と、20年で2倍近く増えています。 長時間労働の見直しで、2024年4月から時間外労働に年960時間という上限規制が適用されました。
2022年時点で、トラックドライバー全体では約3割、長距離輸送では約4割が、この時間外労働年960時間を超過していました。4月からこの規制が適用されたため、人手不足が深刻化している状況です。 次のページは ■2024年問題で収入減 トラック業界の転職事情
■2024年問題で収入減 トラック業界の転職事情
『2024年問題』のトラックドライバーへの影響です。
時間外労働の上限規制などで労働時間が減少し、収入が減ります。 年間所得は全産業平均489万円に比べ、トラックドライバーは446万円と、約1割低いのですが、これが、さらに減ります。
「今後、運送会社は、ドライバーの待遇を改善して事業拡大する運送会社と、ドライバーの待遇を悪化させジリ貧になる運送会社の二極化が進んでいく」ということです。 坂田さん
「4月に規制が始まったが、意外にも転職する人は少なかった。本格化するのは、ボーナスが出る来月から再来月。転職するとしたら、待遇改善を図っている会社や個人事業主の配送ドライバーとして独立する」 トラックドライバーの高齢化の実態です。 2022年時点で、50代以上の人数が全体の約半数です。 ある会社の場合、50代のベテランドライバーが多く、最年長は74歳ということです。
担当者は、
「免許離れの影響もあり、若者が入ってこない。最近24歳のドライバーが入ったが、業界でもかなり珍しい」と話しています。
「ドライバーの高齢化は、年々進行している。このまま行けば、5年後10年後に深刻なドライバー不足に陥るのは目に見えている。企業の多くは、ドライバーの若返りを狙っている」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2024年5月29日放送分より)
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