多摩川の河川敷で昨年12月、無職原唯之さん（当時46）=東京都江戸川区=の遺体をスーツケースに入れて遺棄したとして、元交際相手で大阪府高槻市の無職西高舞容疑者（32）と、同容疑者の両親、兄、交際相手の男の計5人が逮捕された事件で、西高容疑者が、原さんとの間で「動画配信をめぐりトラブルがあった」と神奈川県警に話していたことがわかった。金銭トラブルもあったという。母親は容疑を否認しているが、ほか４人は遺棄容疑を認め、事前に計画して原さんの殺害に関与したという趣旨の説明もしているという。

　捜査関係者などによると、原さんは10年ほど前から「唯我」名義で動画投稿サイトで活動。生配信を行っていた。対立する相手への批判や自身の独特な価値観を語ることで収入を得ていたという。その中で、西高容疑者やその家族を批判することがあり、トラブルになっていたという。昨年9月には、配信動画を撮るための旅行先の名古屋市内で西高容疑者に暴言をはいたなどとして、原さんは脅迫容疑で逮捕されていた。

　遺体発見時、原さんは手足を縛られ、スーツケースにはおもりがつけられていた。スーツケースは都内で容疑者らが購入したという。

　今回の事件では、原さんが動画配信者だったことから、動画投稿サイト上で事件の「考察」などが盛んに行われた。中には、無関係の人を犯人視する投稿もあったという。

　捜査の拠点となった警察署近くでは事件後、スマホを手に生配信する人も現れた。また、県警に「情報提供」を持ちかけ、捜査員とのやりとりを実況する人もいた。

　県警は、原さんを知る関係者に事情を聴くことで、捜査の進捗（しんちょく）状況が動画などで公開され、容疑者が視聴する恐れがあると判断。動画配信者らへの聴取をやめ、防犯カメラなど客観的な証拠を重点的に調べる手法に切り替えたという。ある捜査幹部は「極めて異例な手法をとったが、誰でも情報発信できる時代。今後も同様の事態は想定される」と話す。（加藤美帆、中嶋周平、稲葉有紗）

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