気象庁は27日、奄美地方をのぞく鹿児島県と宮崎県で同日夜から翌28日の日中にかけて、線状降水帯が発生する恐れがあると発表した。線状降水帯は夜間に発生しやすいとされ、過去の大きな災害でもこの時間帯に被害が起きてきた。どのように備え、避難すればいいのか。
福岡管区気象台によると、中国大陸からのびる前線上の低気圧が28日に九州を通過する見込みで、この低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気が非常に不安定になる。27日午前、初めての県単位となる線状降水帯の発生予報が出た。
27日午後6時から翌28日までに予想される24時間降水量は、いずれも多い所で、奄美地方をのぞく鹿児島県で300ミリ、宮崎県で250ミリ。また熊本県でも球磨地方で200ミリ、天草・芦北地方で180ミリの24時間降水量を予想している。線状降水帯が発生すると、さらに局地的に雨量が増える恐れがある。
福岡管区気象台と九州地方整備局は27日午後、合同で記者会見し、「大雨災害の危険度が急激に高まる可能性がある」と警戒を呼びかけた。
気象台などは、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫(はんらん)に厳重に警戒するよう求めた。自治体の呼びかけや河川の水位情報などに注意し、明るい時間から早めに避難場所や避難経路を確認するなど、あらかじめ避難行動の準備をするように求めている。
線状降水帯は、夜間に発生しやすい。日が沈んで気温が下がると、空気が冷えて水蒸気が凝結し、雨雲が発達しやすくなるためだ。昨年7月も福岡県や佐賀県で明け方に線状降水帯が発生し、甚大な被害をもたらした。
鹿児島市は27日午後6時、市内全域の土砂災害警戒区域などに住む1万1434世帯、2万955人を対象に「高齢者等避難」(警戒レベル3相当)を発表。鹿児島県災害対策課は「今後、大雨警報や洪水警報が出たら登庁して災害待機や情報収集をする。今夜から明日にかけて、それぞれで心構えを高めてもらっている」と話した。
宮崎県内の学校現場は対策を進めた。県教育委員会によると、27日午後5時段階で都城市3校、延岡市3校、小林市2校など県下の高校計13校が28日の自宅待機を決めている。
どのように大雨に備えたらいいのか。
日本気象協会は、大雨時の避難のポイントをまとめている。気象庁などの最新情報を入手し、各自治体が「警戒レベル4」の「避難指示」を出すまでの間に避難するよう促している。
夜間の避難は、見通しが悪くなって危険だ。仮に道路が冠水すると、歩行できる水位の目安は「ひざ下まで」。状況に応じて避難所には無理に向かわず、近くにある鉄筋コンクリート製の建物などに逃げる。自宅から出られない場合は上階などへの「垂直避難」が必要で、山や崖から離れた部屋に移る。
避難時の服装は長袖や長ズボン、ふだん履いているスニーカーを選ぶ。長靴を選びがちだが、靴の中に水が入って歩きにくくなることから、避けるよう呼びかけている。帽子やヘルメットは頭部を守るうえで有効だ。
必要な荷物はあらかじめリュックに入れて準備しておく。リュックを選ぶのは、避難時に両手を使えるようにするためだ。中身は懐中電灯や携帯電話用の充電器、ラジオ、非常食や水、貴重品などを用意しておきたい。(伊藤隆太郎、飯島健太、安田朋起、石川雅彦)
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