徳島県三好市の山奥にある廃校で新たな試みが始まる。地域創生に取り組む地元企業がこれまでの相部屋型ゲストハウスをリニューアルし、客に「注文」を出して眠りに導く体験型宿泊プランを提供する。交通の便の悪さや人手不足といった社会課題を「観光資源」と捉え、不眠や睡眠不足といった現代人の悩み解決を目指す。(共同=伊藤美優)
挑戦の舞台は2013年に閉校した旧市立出合小。ゲストハウスなどを運営してきた「ハレとケデザイン舎」が新たに始めるのは「注文の多い誘眠店」だ。宿泊客に対し、到着から眠るまでにさまざまな体験を指示するため、宮沢賢治の童話をもじって名付けた。
気になる「注文」は、山奥の廃校にたどり着くことからまず始まるという。公共交通機関も十分にない中で、ここを目指してもらう事を一つの目的とした。食事はあえて過度に食材を使わず、消化に良いメニューをレトルトや冷凍パックで詰め合わせて提供する。さらにサウナやヨガ、薬膳茶などを指示に従って体験してもらう。
企画のきっかけは、デザイナーでもある代表植本修子さん(52)の実体験だ。新型コロナウイルスの流行で、ゲストハウスの運営が厳しくなると、植本さんは時々使われない部屋で寝泊まりするように。その際に「なぜか分からないが、すごくよく眠れた」という。
植本さんは同時に、山間部の多くの課題を逆手に取って、熟睡につながる観光資源にしてしまおうと奮闘している。例えば、過疎による人手不足はほぼ無人の宿泊施設にすることで解決し、老朽化した校舎は時が止まった廃虚の雰囲気を醸し出すために生かした。
さまざまな「注文」が睡眠の質向上につながるという証拠も示せるよう、専門家による検証も進めている。「アトラクションだと思って友人同士で参加して」と植本さん。全てが体験できるプランの提供は今年秋になる予定だ。
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