愛知県犬山市の博物館明治村にある北里研究所本館・医学館の常設展示がリニューアルされた。この研究所で細菌学に取り組んだ北里柴三郎(1853~1931)が、7月3日に発行される新しい1千円札の「顔」になるのを記念したもので、国内では2020年1月に初の感染者が出た新型コロナウイルスとの闘いも盛り込んだ。

 北里は破傷風菌の純粋培養に世界で初めて成功し、治療法を確立した。同館はドイツ・バロック風の木造2階建て。1915(大正4)年に東京都港区に建てられた研究所の一部が1980(昭和55)年、明治村「3丁目」エリアに移築復元され、「近代日本医学の父」と呼ばれる北里の歩みなどを紹介してきた。

 今回のリニューアルでは、過去に流行したペストやコレラなどとの闘いを新型コロナと絡めながら紹介したり、顕微鏡で動植物の細胞を観察できる体験コーナーを充実させたりした。新千円札の肖像に北里の46~57歳の写真4枚が合成された理由もパネルで説明。コロナ禍のマスク不足の折に当時の安倍晋三政権が国民に配った布マスク(通称アベノマスク)も展示されている。

 明治村の中川武館長は5月11日のリニューアル記念式典で、同館がNHKの連続テレビ小説「虎に翼」の撮影に使われたことを紹介しながら、「コロナ禍を経験した私たちが、北里ら先人がどのように感染症と向き合ったか学ぶことは必要だ。親子で考えるきっかけにしてほしい」と来館を呼びかけた。

 16日の記念トークイベントには、感染症の専門家として新型コロナ対策を引っ張った尾身茂さん(結核予防会理事長)が登壇。「国民病」だった結核の予防を図る民間組織をつくった北里の功績について、「実験室を出て、社会問題を解決しようという視野の広さを持っていた」とたたえた。(嶋田圭一郎)

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