北海道猟友会砂川支部 奈井江部会 山岸辰人部会長
「クマやるってことはデルタフォース(米軍の特殊部隊)相手にしてるようなもんだよ。こっちはただのハンターだ」
Q.これが日当でいうと8500円くらい
「高校生のコンビニのバイトだってもっともらってるだろ。それでヒグマに立ち向かっていくんですかって話、誰が行くんですか」
北海道奈井江町では地元猟友会がクマ駆除への参加を辞退する方針を表明しました。
猟友会の山岸氏は辞退した理由について、手当を加えても最大10300円という報酬の低さと、事前に相談もなく、条件を提示してきた行政の対応への不信感にあったと話します。
奈井江町周辺の他の自治体の報酬を調べたところ、日当の他、駆除に関わる報酬が加算されるなど自治体によって対応はまちまち。
札幌市の場合は、ハンターの保険などの費用として猟友会にまとまった金額が支払われるほか、丸一日出動の場合は個人の報酬は5万円以上になります。
人口195万人の札幌市に対し、5000人未満の奈井江町とでは財源にも差があります。
物価高の中、ガソリン代などの経費もかかります。
奈井江町は、「猟友会と改めて話したい」としています。
実は猟友会と自治体の同様の事態はかつて別の町でも起きていました。
北海道猟友会寿都支部 島牧分会 花田雄二さん
「その金額では全くできないので、私たちは出ることができませんっていうのが2年ぐらい続いたんです」
そもそも猟友会というのは行政の組織ではありません。
今、クマ駆除の在り方を根本から見直すべきではという議論も進んでいます。
■“若手”育成は急務も 行政ハンターに壁も
三笠市 鳥獣部門 高崎梨徒さん(24)
「ちょうどよく、これ分かります。クマの、ここ、手の底で指があってっていう感じで」
高崎梨徒さんは、現在24歳の若手ハンターです。
地元猟友会に所属もしつつ、北海道三笠市の職員としてヒグマの駆除に携わっています。
三笠市 鳥獣部門 高崎梨徒さん(24)
「そこのやぶからガサガサガサって、 もう本当に熊降りてきて、もう僕の目の前3メーターぐらいまで来たんですよね。ここ道路上ですし、後ろにいる警察の方が撃ってくださいって言ってもらえれば、その、撃つことはできるかもしれないですけど、もう本当に目の前までクマ出てきているんで、みんな声すら出ないんですよね。もちろん引き金を引くのはハンターなので、命がけっていうのは間違いないですけど、こうやって道路を封鎖するために臨場してくれている警察の方であったり、その問題を解決するために集まった人たちも命がけで作業にあたってくださっているので」
もともと動物好きだった高崎さん。大学で獣害研究を通じ、駆除活動の大切さに気付き猟友会に教えを請い、ハンターの道へ。ヒグマ駆除の傍ら、普段は市役所の業務をこなす毎日…。行政に所属するハンターで「ガバメントハンター」と呼ばれています。
三笠市 鳥獣部門 高崎梨徒さん(24)
「市内で大体3つのエリアに熊の出没が集中していますよっていう、こういう資料を作ったりしています。市役所の行政サイドの職員としては異動があるので、全く熊の知識のない方が担当になることもあることもあるので、こうやって地図で視覚的に示すと 対策が打てるようになるじゃないですか。これ、ヒグマの下あごの第4全臼歯っていう歯なんですけど、捕獲した個体から歯なり肝臓など、大腿骨っていう太ももの骨なりを採取して研究機関に送るっていうことも仕事としてやっています。この下顎第四全臼歯からは正確な年齢がわかるので。やっぱり猟友会に所属している方も決して暇ではないですし、それぞれ仕事を持ったりもしているので、こういう専門職についているから、こういうことに集中できている」
もともと名古屋の都会育ち。銃に触れたこともない状態で、2年前、猟友会に飛び込み、技術を習得しました。三笠市の上司は…。
三笠市 農林課長 豊口哲也さん
「猟友会との中でも、いわゆる熟練者というか、経験、先輩たちとその若手というところでいい潤滑になって、この2年間活動をいただいてきているなという風に感じています。先輩たちからも高崎に任せたというな、言葉も、猟友会の幹部の方と話す中ではそういう声も聞かれますので、これまでの本人の努力っていうものと」
北海道猟友会によると、ハンターの数は、ピーク時の4分の1に激減。若手の育成は急務です。
しかし高崎さんは「地域おこし協力隊」制度を利用し、三笠市に雇用されているため、任期はあと1年しかありません。
三笠市 鳥獣部門 高崎梨徒さん(24)
「外から来た人間ですけど、僕に猟を教えてくれた師匠をはじめ猟友会の方にも本当にお世話になりましたし、この町の方にもとても良くしてもらっているので、どこかその野生動物管理、野生動物対策っていう分野で市の人たちに恩返しといいますか、 貢献していけたらなと思っています」
去年、専門家などでつくる「ヒグマの会」は、今後ヒグマとどう向き合っていくべきかの提言書を北海道知事に提出。
行政として、捕獲の経験と高い技術を持つ地元猟友会と併せ、ヒグマの知識をもった「専門対策員」を地域ごとに設置することを提案しました。
「ヒグマの会」事務局長 酪農学園大学 佐藤喜和教授
「捕獲を担うその担い手を行政が直接雇用するというのはまだなかなかハードルが高いかなと思うんですけれども、タカサキさんの例もそうですけれどもやがてですね、正式な雇用になるに従ってですね、地域の捕獲の担い手のリーダーシップを取れるような存在になって、 ヒグマの管理に必要な対策ですとか新しい知識を持ってですね、より良い管理に向けて進んでいくような、専門対策員というのもあると思います今回あったような金銭的な問題が発生しないように、事前に十分な対話をしながら調整をしていくとか、できるようになっていくだろうと思います」
(2024年5月26日「サンデーLIVE!!」)
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