東京五輪・パラリンピックを巡る談合事件で、独占禁止法違反(不当な取引制限)の罪に問われたテレビ番組制作会社側が24日の初公判で起訴内容を否認した。立件された6社の主張が出そろい、各社が不正を否定し争う構図が明確になった。検察側が受注調整の詳細な経緯をどう立証するかが公判の焦点になる。
東京地裁で初公判があったのはフジクリエイティブコーポレーション(FCC、東京・江東)と同社役員の藤野昌彦被告(64)。藤野役員は罪状認否で「入札には正々堂々と参加し落札した」と強調し、法人としての同社とともに無罪を主張した。
弁護側は大会組織委員会が発注した業務で受注調整がなされているとFCC側に伝えた人物はおらず、不当な取引制限はなかったとの認識を示した。検察側は冒頭陳述で、FCCは他の事業者や組織委員会側と共謀して受注調整していたと改めて主張した。
事件を巡っては、組織委発注業務の落札企業を事前に決めたとして、広告最大手の電通など法人6社と担当幹部ら7人が起訴された。
検察側が事前に受注調整があったとみるのは①テスト大会の計画立案業務(競争入札)②テスト大会の実施業務(随意契約)③本大会の運営業務(随意契約)――の3つ。受注規模は総額約437億円に上る。
組織委側で調整をとりまとめたとして独禁法違反罪に問われた元次長は起訴内容を認め、有罪判決が確定した。一方、談合に参加したとして立件された6社のうち、全ての業務に関して不正な受注調整があったと認めた企業はない。
組織委とともに談合を主導したとされる電通側は、テスト大会計画立案業務については受注調整を認めた。一方、残る本大会運営業務などに関しては「不当な取引制限に合意していない」と否認した。
FCCのほか、博報堂やイベント会社のセレスポ、セイムトゥー(東京・港)の4社はいずれの業務についても起訴内容を認めていない。
東京経済大の中里浩教授(独禁法)は受注調整に関する認識に差がある背景について「事件の構図が影響している」とみる。「一般的な談合は各社が事前にルール内容を知っている。東京五輪では組織委と電通側が各社と個別に調整したとされ、全体像の認識に濃淡が生まれているのではないか」と指摘する。
独禁法違反(不当な取引制限)罪は、受注調整を通じ競争を制限した場合に成立する。中里教授は「本大会を含めて確実に落札できるという認識で各社が調整に合意し、結果として割り振り通りに受注に成功したという詳細な経緯の立証がカギになる」と話した。
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