「2025年大阪・関西万博」会場の工事現場で3月に発生した爆発火災をめぐり、日本国際博覧会協会(万博協会)は22日、現場のトイレ棟の天井部分などに新たな損傷箇所が確認されたと発表した。ただ、被害の全容が明らかになったとは言いがたい状況だ。

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 万博会場「グリーンワールド(GW)工区」のトイレ棟で起きた爆発火災について、万博協会が「事故」として公表したのは、発生翌日の3月29日だった。物的被害は「コンクリート床と床点検口の破損」と説明した。

 報道機関には、爆発後の屋内の状況がわかる写真1枚を提供したが、床の破損箇所が見切れているなど被害の全容を示すものではなかった。

 朝日新聞は4月上旬、大阪市に対して情報公開請求をし、5月21日までに、消防局の記録や、協会から大阪府市の万博推進局への報告メールなどが開示された。消防記録は4月8日付の資料で、消防署員が現場の調査概要をまとめている。

 この消防記録により、施工業者から市消防局への連絡が爆発の約4時間半後だったことや、協会が今回明らかにした天井部分の損傷などについても明らかになった。

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 朝日新聞は5月15日、万博協会に対し、それまで説明していなかった天井部分の損傷について見解を求めたが、広報担当者は「把握していない」と答えた。22日に再度問うと、「消防とのやりとりは施工者がするものだと認識している」と説明した。他の現場写真の提供も拒み、「理由は説明できない」と話した。

 市の開示情報からは、別の複数の写真の存在が確認できたが、消防が撮影した外観写真と協会の提供写真を除き、大半は「黒塗り」にされていた。

 市側は非開示の理由として、市情報公開条例7条2項などの規定を挙げた。条文では、法人などの権利や競争上の地位、正当な利益を害する恐れがある情報は開示できない、とされている。担当者は「施工業者の技術やノウハウ、経営戦略に支障を及ぼしかねない情報がある」と説明した。

 GW工区は市有地だが、使用貸借契約により、現在は協会が管理している。トイレ棟の現在の所有権は、工事を請け負う施工業者にあるとされ、市の担当者は「建物内の写真は無断で公表できない」としている。(岡野翔)

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