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四国に点在する88カ所の寺を巡る「お遍路」。うるう年の今年は「逆打ち」と呼ばれるお遍路に挑戦する人が増えています。なんと逆から巡るとご利益3倍!?お遍路さん急増で、トラブルも…。にわかに急増する、お遍路さんを追跡しました。

■ゴールからスタートの“逆打ち”

四国に古くから伝わるお遍路。今、世界中から巡礼者が殺到しています。

アメリカから来た人(73)
「お寺の静寂さも好きですし、日本をもっと学びたいと思っていました。もっと心が豊かになれると思って」 お遍路は、弘法大師・空海にゆかりのある1番から88番の札所を順番に回る“順打ち”が基本なのですが…。 東京から来た人
「今年はうるう年だから、逆打ち」 うるう年は、88番から反対に回る“逆打ち”をすると、ご利益が3倍になるという言い伝えがあるのです。 通常、お遍路のゴールとなる88番札所「大窪寺」。 愛媛から来た人
「うるう年で逆打ちで」 3倍のご利益にあやかろうとやってきた、愛媛から来た7人組の女性。その願いは? 愛媛から来た人
「やっぱり家内安全やろ。無病息災とか、(息子に)お嫁さんが来ますように」
「それ一番やな」 次のページは ■いきなり試練…初日で“出直し”

■いきなり試練…初日で“出直し”

ここにも、まさに逆打ちの旅を始めようとするお遍路さんがいました。松本直也さん(29)。実家は、京都にあるお寺だといいます。

松本さん
「来た理由っていうのも特に決めていないので、味わいながら(できたら)」

今年は3倍のご利益と聞き、ふと思い立ってやってきたといいます。

それにしても気になるのは、なぜか、デリバリー配達員のバッグを背負っています。 松本さん
「各地でできるので僕にピッタリだなと」

聞けば、デリバリー配達で旅の資金を稼ぎながらお遍路に挑戦しようと言うんです。

試練が

逆打ちお遍路のスタートは、いきなりの険しい山道。88番から87番札所への道のりは、お遍路でも有数の難所。“逆打ち”は、試練から始まるのです。

松本さん
「うわ〜くだり怖っ」 急こう配の山道を歩き、およそ4時間。松本さんから、思いがけない言葉が出ました。 松本さん
「この荷物で行くところじゃないな…。きょうで、いったん終わるかもしれない」 なんと、初日で断念。装備を改め、出直すといいます。“3倍のご利益”を得るための道のりは、楽ではありませんね。

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■逆打ちならではの交流 「お接待は素晴らしい」

■逆打ちならではの交流 「お接待は素晴らしい」

徳島県にある15番札所「国分寺」。逆打ちに挑戦中の、外国人お遍路さんに出会いました。

フランスからやってきた、ステファニーさん(34)。「仏教の教え」に興味があり、お遍路に挑戦したといいます。 ステファニーさん
「歩くことが好き。お遍路は仏教の巡礼だと知って、いつか絶対やってみたいと思っていた」 一緒に歩いているフランソワさん(35)は、聞けばお遍路のベテランでした。 フランソワさん
「(Q.お遍路は何回目?)6回目。今年は逆打ち。仏教のことや、日本の文化を知っているから(世界に)シェアしたい」

お遍路の魅力を広めたいと、フランスの新聞で同行者を募集。そこにステファニーさんが手を挙げたのだと言います。逆打ちの旅を始め、すでに47日目…。

ステファニーさん
「はい、お接待。頑張ってー」

道中ですれ違う“順打ち”のお遍路さんとの交流。逆打ちならではの魅力です。

フランソワさん
「(逆打ちは)毎日新しい人に会うことが良い。いろんな話をいろんな人とできる。本当に一期一会」 ステファニーさん
「お接待は素晴らしい。『気持ち』をもらえる。誰かが気にかけてくれると、その日を乗り切れるって信じさせてくれるの」

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■“フランス国旗”が弘法大師の上に!?

■“フランス国旗”が弘法大師の上に!?

それにしても、そもそもなぜうるう年に逆打ちをすると、3倍のご利益があるとされているのでしょうか?

その理由は、この弘法大師の銅像にありました。

フランソワさん
「(この人は)逆に回れば弘法大師に巡り合えると。それで許しを得たんだ」 ステファニーさん
「(この像は)許してもらった瞬間ってこと?」 その昔、衛門三郎(えもんさぶろう)という欲深い男が、自宅を訪れた托鉢僧(たくはつそう)を追い返したところ、度重なる不幸に見舞われました。

実は、その托鉢僧こそ、弘法大師・空海。

衛門三郎は謝罪しようと四国巡礼を始めたものの、何度回っても会えません。 そこで、逆に歩いたところ、ついに弘法大師に会えたのが、旧暦のうるう月。 それ以来、うるう年に逆打ちをすると、よりご利益があると信じられるようになったというわけです。 2人のスタートから84番目の札所、大日寺に到着。すると、住職の計らいでお堂の中へ。ここで、思いもしないものを目にすることになったのです。 フランソワさん
「フランスの…」 なぜか弘法大師の上に描かれたにフランスの国旗?!いったい、どういうことなのでしょうか。

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■あるものを目に、思わず涙も…

■あるものを目に、思わず涙も…

一方、徳島県にある「雲辺寺」。ここで出会ったのは、台湾からの6人組お遍路さん。 台湾から来た人
「先輩、先輩。写真を撮って良いですか?」 彼女たちが「先輩」とあがめるこの男性は、なんとお遍路を102回も回ったという超ベテラン。 御朱印を何度も何度も重ねて押したため、納経帳は真っ赤です!

「本当にすごいわ」「スゴすぎる」と口にする彼女たちは、この後、これ以上の感激を味わうことになります。御朱印をもらう納経所で、“あるもの”を目にしたのです。

台湾から来た人
「台湾だって」
「台湾大地震の募金」

被災した母国への、思いがけない善意。

台湾から来た人
「泣けてきちゃう」 納経所の人
「地震、大丈夫だった?」 台湾から来た人
「大丈夫。大丈夫。家は結構しっかりしている」 台湾から来た人
「人生も旅も、すべてが自分の思うように進むわけじゃない。でも、見渡せば美しいものに気づくことができる。だから日々、すべてのものに感謝している」

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■迫る日没…山道で迷子も

■迫る日没…山道で迷子も

にぎわう遍路道。でも、人が増えればトラブルがつきものです。徳島県で、遍路宿「お宿 すだち庵」を営む角田雄士さんにSOSがありました。

70代の2人の宿泊者が、山道でルートを間違え迷ってしまっため、すぐに迎えに行くことに。

角田さん
「ここしかありえへん。ウソやろ、どこいった!?」

約束した場所に2人の姿がありません。日没が迫り、焦る角田さん。

すると…。

角田さん
「ちょうど2人」 お遍路さん
「本当に申し訳ありません」 角田さん
「迷っちゃいましたね」 安堵の表情を浮かべる2人。宿とは、まったく逆方向に歩いてしまったのだといいます。 道に迷ったお遍路さん
「こういうことは、今まで経験したことがない。本当に親切にしていただいて」

お遍路さんが増えている今年、こうしたトラブルも少なくないと言います。

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■野宿も…「人に会うのが楽しい」

■野宿も…「人に会うのが楽しい」

さらに、イタリアから来た家族は、こんな事態も…。

イタリアから
母・シルケさん
「泊まるところが見つからない。お寺の公園で泊まったり」

そう、お遍路さんの急増による宿不足。イタリアからきたシルケさんは、4人分の宿の確保は難しく、40日中、実に半分が野宿だといいます。

連日、10時間歩いた末の野宿はきつそうですが、子どもたちはそんな状況も楽しんでいるのだとか…。

長男・ラファエル君
「宿はお金がかかるけど…ここは無料」

さらに、人の優しさに触れることも。

住民
「今、お話ちょっと聞こえたから。お遍路頑張って」 シルケさん
「ありがとうございます」 住民
「頑張って」 次男・ルカ君
「こうしていると、いろんな人たちと出会う。人に会うのが楽しいし、仲良くなることが大事」

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■49日間の旅終えるも…「弘法大師と会えるまでがゴール」

■49日間の旅終えるも…「弘法大師と会えるまでがゴール」

一方、逆打ちお遍路を続けるフランス人2人組、フランソワさんとステファニーさん。

スタートから84番目の目的地「大日寺」。住職の計らいで、普段は開放していないお堂の中へ…。滅多にない機会で、じっくり見る2人。 住職
「私の父が、そこにある絵をすべて描いた」

そこには、思いがけないものがありました。

フランソワさん
「フランスの国旗みたい」

確かにトリコロールのカラーリングですが…。

住職
「真言宗を伝える8人の重要なお坊さんになりますね。これが最後に、弘法大師」

画家であった先代の住職が、これまでにない仏画に挑戦したいと、江戸時代に流行ったという3色を取り入れたのだそう。

フランスとは関係ないそうですが、不思議な縁を感じたようです。

そして、一番札所「霊山寺」。通常は、お遍路スタートのお寺ですが、2人にとっては、88番目のゴールです。 1200キロの行程を49日間かけ、歩き終えました。 ステファニーさん
「うれしくもあり、悲しくもある。終わってしまうから。私の気持ちを理解するには、みなさんもお遍路を歩いてみるべき」

フランソワさんは、6回目のお遍路を終えました。でも、挑戦は終わらないといいます。

フランソワさん
「ゴールはなんだろう…。弘法大師と会えるまで」

それぞれの思いを胸に、きょうも多くのお遍路さんは歩き続けています。

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