今春、東京都心の鉄道車両内でヘビの出没が相次いでいる。時にペットとして飼われていたヘビが行方不明になり、捜索するニュースが世間を騒がせることもあるが、さて今回は。電車内で万一遭遇したら、どう対処すれば良いのだろうか。(曽田晋太郎)

◆ボールペンくらいの太さ、体長20センチのアオダイショウ

 「前を走る電車にヘビが出たため、遅れが生じています」。先週末、東京新聞「こちら特報部」のデスクの一人は、JR山手線でそんなアナウンスに出くわし、耳を疑ったという。

JR山手線(資料写真)

 JR東日本によると、12日午後5時ごろ、渋谷駅で山手線内回りの電車(11両)を降りた乗客から「ヘビのような小動物がいる」と駅員に申し出があった。  電車は駒込駅で運転を止め、駅員が車内を捜索。何も見つからなかったため午後6時ごろ、当該の車両を立ち入り禁止にし、運転を再開した。捜索に伴い、電車3本に最大約15分の遅れが生じ、約2700人に影響が出た。  電車はその後、大崎駅近くの車両基地に収容された。社員が再度車内を調べたところ、座席シート下の機器内にヘビがいるのを見つけ、品川署に引き渡した。  同署によると、ヘビはアオダイショウで、体長20センチほど。見た目ではボールペンくらいの太さで小さかったという。毒ヘビではなく、遺失物としての届け出もなかったので自然に返したそうだ。

◆新幹線では近年に3回 一体どこから乗ったのか

 先月16日には、東京駅に到着した名古屋発の東海道新幹線の車内からヘビが見つかっていた。午後5時20分ごろ、降車した乗客から「車内にヘビがいる」との申し出があった。JRの検査員が車内を調べたところ、体長40センチほどのヘビを発見。捕獲し、丸の内署に引き渡した。後続列車に17分の遅れが出て、約630人に影響した。山手線と新幹線のケースはともに、けが人はいなかった。  JR東日本首都圏本部広報ユニットの担当者によると、電車内でヘビが見つかる事例は「記憶にない」という。一方、JR東海が管轄する東海道新幹線では、2011年と2016年にもヘビが見つかる事例があった。

◆誰かが車内に持ち込んだ可能性も

 鉄道ライターの杉山淳一さんは、電車内でヘビが見つかるのは「珍しいのではないか」と話す。  杉山さんは「手回り品切符」を窓口で買い、自身の飼い犬を電車に乗せた経験がある。JRは旅客営業規則で、イヌやネコを専用の容器に入れた上で、手回り品料金を払って持ち込むことを認めている。ただし、ヘビは手回り品の対象外だ。  「鉄道は乗客一人一人の手荷物検査をするのは難しく、仮に隠して乗車したペットのヘビが逃げたのであれば防ぎようがない」と杉山さんは語る。

◆ヘビは逃げていくはず「落ち着いて、駅員らに通報して」

 ヘビに詳しそうな人にも聞いた。ネズミやヘビ、害虫などの生態の調査研究や駆除相談を担う公益社団法人「東京都ペストコントロール協会」の奥村龍一専務理事は「都心に生息するヘビは主にアオダイショウ。公園などにも生息しており、野生が餌を求めて車両に迷い込んだ可能性が高い」とみる。  アオダイショウの餌はネズミや鳥の卵、ひなといい「冬眠を終え、暑すぎず気候の良い今の季節は、餌を求めて活発に活動する時期。鉄道の駅にいるネズミなどを求めて侵入してきたのではないか」と推し量る。  では、もし電車内や駅などで遭遇したら、どう対処すれば良いのか。奥村さんは「ヘビは本来、自分より大きな人間には近寄らず、むしろ逃げる習性。見つけた場合は落ち着いて、駅員らに通報してほしい」と指南する。


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