紫外線の気になる夏を前に、埼玉県春日部市の「田中帽子店」が麦わら帽子の出荷作業に追われている。創業は1880(明治13)年で、手作りの伝統を100年以上引き継いできた。6代目の田中優(たなか・ゆう)さん(33)は「一つ一つ丁寧に作った帽子は頭になじみ、かぶりやすい」と魅力を語る。
明治時代に帽子を身に着ける欧州の文化が流入。麦の栽培が盛んだった春日部で、収穫後に余った麦の茎を編んで作り始めた。当時は農作業の際にかぶることが多かったという。
製造方法は当時から変わっていない。形を決める木型やミシンなどの道具は何十年と受け継がれてきた。細い麦をクルクルと回しながら編み込んでいく作業は、一部の人にしかできない職人技で、一人前になるには約10年かかる。技術を継承している工房は国内でもわずかだ。
大量生産の海外製品と違い、日本人に多い丸い頭の形に合わせて作るため長時間かぶっていても疲れにくい。裏側にある汗止め部分のテープでサイズの調整もできるのが特徴だ。
約20年前には布の帽子が主流となり、経営が苦しい時期もあったが、伝統を絶やすわけにはいかないと製造を続けた。最近は天然素材の良さが見直され、年間に約5万個を作っている。
麦わら帽子は通気性に優れ、シンプルなデザインは和洋両方の装いに合う。田中さんは「これからの暑い季節にかぶってもらい、快適に過ごしてほしい」と話している。
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