今回、追跡班が向かったのは、千葉県柏市のある一軒家。中に入ると、大量のごはんを無我夢中でほおばる少年たち。そんな彼らが汗を流すのが相撲です。
しかし今、この相撲少年たちあるピンチが…。それが、相次ぐ値上げ。なんと食費が1カ月で30万円に!値上げの春、相撲少年団の奮闘を追跡します。
■食費「1.5倍〜2倍」 月20万円→30万円に…
千葉県柏市にある市営の相撲場。ここで日々稽古をしているのが、名門相撲クラブ「柏相撲少年団」。 子どもたちを指導するのは、監督の永井明慶さん(41)。実はこの相撲団、数々の幕内力士を輩出する名門。“褒めて伸ばす”がモットーという永井さんのもとへは、全国から力士を目指す少年たちが集まっています。 永井さん「歩け、ゆうき。ゆうき歩け、歩け、歩け。ああ、もったいない。負けるのは恥ずかしくないから」 そんな柏相撲少年団の寮が、この一軒家。2階は監督の自宅、1階が寮になっています。25畳の大食堂、そして少年たちの部屋が3部屋あります。 こちらは、8畳に2段ベット2つという5人部屋です。全国から集まった11歳から16歳の少年12人が生活しています。 週に2度の買い物から帰ってきた永井さん。次々と食材を運びこみます。ずらりと並ぶ食材、これで3、4日分だそうです。
鶏むね肉4キロ、豚こま切れ3.5キロなど、全部でおよそ4万4000円。食事をはじめ、少年たちの生活を永井さん1人で支えますが、今、大きな悩みがありました。
永井さん「帳簿みていくと、買い出し(食費)が1.5倍、2倍に」
相次ぐ値上げで、数年前まで月20万円の食費が、今は30万円にも。寮費は一人月5万円ですが、ぎりぎりの状態だといいます。そんな値上げのなかの節約術とは?
永井さん「きょう、たまたま長ネギの半額があったんで全部買ってきて。細かく切っちゃって、冷凍して保管しておく」 大きな味方は、大型冷蔵庫や冷凍庫など合わせて6台。 永井さん
「鶏と野菜と魚はこっちで。これ鶏(ひき肉)ですね。兵庫の方が毎月送ってくれるんですよ。10キロぐらい送ってくれますね」 さらに、水道光熱費は月20万円近くかかるといいます。
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■ちゃんこ「高騰で無理」でも…ボリューム&栄養満点!■ちゃんこ「高騰で無理」でも…ボリューム&栄養満点!
食事には、永井さんの様々な節約アイディアが。冷蔵庫から取り出したのは厚揚げとちくわ。鶏肉の代わりに厚揚げを使い、ちくわで“かさ増し”した「厚揚げを使った親子丼風」です。 永井さん「ちくわは汁物に入れると膨らんでくれるんで、少ない量でも大きくなってくれるから」
「(モヤシは)ゆでちゃうとしぼんじゃうんで、電子レンジで全部調理しちゃう」 モヤシは、ボリューム感をなくさないよう電子レンジを使い、白ゴマやゴマ油で和え「モヤシのナムル」に。比較的値上がりが少ない食材を使うのもこだわりです。 永井さん
「(豆腐は)若干高くなってるけど、他の物に比べたら高くはなってはないかな」
「マーボー豆腐」をさっと仕上げ、安かったホウレンソウを使い味噌汁も同時に作ります。
そして、メインは豚肉2キロを使い、ひと手間かけて味にもこだわった「豚肉の塩炒め」。 永井さん「豚肉は、朝から塩とニンニクで漬けて下ごしらえしてる」 「カボチャの煮物」「コマツナのおひたし」も加え、節約してもボリュームと栄養満点の夕食が完成。 以前は定番のちゃんこ鍋を週に2、3回作っていましたが、今では月に1回がやっとだといいます。 永井さん
「材料費と調味料高騰で無理」 お米は毎晩30合を炊飯器2台を使って炊きあげています。身体を大きくするために、夕食は普通の茶碗6杯分の2.5合を食べるのが寮の決まりです。 稽古でお腹がペコペコの少年たち。どんどんと平らげていきます。厚揚げを使った親子丼風は「おいしいです。“なんちゃって”とは思えないクオリティーです」と好評です。 食後には、デザート代わりに腹ごなしの“ぶつかり稽古”。お風呂は2人1組。お湯はためてもあふれてしまうのでシャワーのみです。
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■福岡から入寮…中学入学 “新たな壁”も■福岡から入寮…中学入学 “新たな壁”も
実は、この日初めて寮での夕食を食べる少年がいました。新・中学1年生の竹内偉夢君(13)90キロです。この日の朝、入寮したばかりです。目標とする力士は横綱・照ノ富士。父親と車で福岡から来ました。
父親「頑張って。自分の目標に向かって前進してください。楽しんで。分かった?」 偉夢君
「はい」 父親
「頑張れ」 偉夢君は小学生時代、福岡では負けなしの実力の持ち主。しかし、相撲団の稽古は、まだ慣れないよう。まずは、基礎的な稽古から。ちょっと緊張気味です。 股割りもちょっと辛そうです。そして、体の大きな先輩とのぶつかり稽古も、新たな壁にぶつかっているようです。 偉夢君
「(先輩は)強いです。当たった時の攻めのはやさが早いです」
寮の一日は朝5時半から。永井さんは、朝食の準備をします。6時には部員たちが起きてきます。
偉夢君も頑張って起きます。部員たちは洗濯やごみ捨てなど家事を当番制で行います。偉夢君は、玄関の掃除をします。 偉夢君「(Q.ちょっとは慣れましたか?)ちょっとだけ慣れました」
朝食は…。
永井さん「朝は簡単な生姜(しょうが)焼きとサラダとごはん」 朝から食欲旺盛な部員たち。実は偉夢君はこの日、中学校の入学式だったのです。 偉夢君
「俺、人見知りなんだよ(笑)」
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■支援者回り、食材集め 「米は300キロ」■支援者回り、食材集め 「米は300キロ」
部員が学校に行くと、永井さんは食材の買い出し。すると…。 店主「モヤシあげたれ。それ。少し、モヤシ」 永井さん
「本当に!?いつも、すみません」 店員
「これ全部サービス」 店主
「あんだけの子ども達いるんだもの」
さらに、車で戻ってきた永井さんですが、支援者をまわり食材を集めています。
永井さん「支援してくれるところに取りに行って」
「(Q.コメとかは?)300キロですよ」 実は、永井さんもこの柏少年相撲団の出身。実業団まで土俵に上がりましたが、目のけがで断念。10年前、妻と子どもと暮らす自宅の1階を寮にして監督を引き受けました。 永井さん
「本当に自分の人生の土台(相撲)になっているものを、次の世代に残してあげたい」
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■初めての戦い…「負けることで強くなる」■初めての戦い…「負けることで強くなる」
5月3日、地元・柏で行われた相撲大会。関東の強豪が集まる、今年度初の重要な大会です。そして、偉夢君にとっては中学2年生・3年生と戦う初めての大会です。 偉夢君「悔いのないように、自分の相撲をとれるようにしたいです」
胸のテープは、朝からかゆいので貼っているそうです。
まずは団体戦。偉夢君は選ばれていませんが、小中学生5人のチームで挑みます。柏相撲少年団は順調に勝ち進みます。 迎えた準決勝は…。 2勝3敗で敗れ、惜しくも3位に。 そして、66人が参加する中学生の無差別級。偉夢君、いざ土俵へ。 1回戦は同じ1年生に快勝。続く2回戦、100キロを超える2年生が相手です。果たして、勝負の行方は…。 残念、立ち合いから一気に寄り倒されてしまいました。悔しい2回戦敗退です。 偉夢君「2回戦目は、もう全然…」
「(Q.自分の相撲ができなかったのが悔しい?)はい」 しかし、永井さんは「負けることで強くなる」といいます。 永井さん
「人生で初めて上級生と戦うなかで、夏の大きな大会前に良い経験になったんじゃないかなと思います」 この記事の写真を見る
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