固定概念に縛られず、自分らしく生きている人には憧れる。自分もそんな風に「やりたいこと」に素直に生きられたらどんなにいいだろうーー。
本記事はWoman type(運営:キャリアデザインセンター)からの提供記事です。元記事はこちらそう思っても、いざやろうとすると「失敗したらどうしよう」「もしかしたら向いてないかも」と不安が湧き上がってきて足がすくんでしまう人も多いかもしれない。
そんな時、ラグビー・リーグワン唯一の日本人女性アナリストである竹内佳乃さんのストーリーは私たちの背中を力強く押してくれる。
データ分析を通してチームを支えている竹内さんは、「ラグビーに関わる仕事がしたい」と本場のラグビーを知るため、単身ニュージーランドに飛び、帰国後も就活はせずに、ラグビーチーム「三重ホンダヒート」のアナリストとしてインターンに没頭。
まさに「やりたい」という気持ちのままに行動し、自分らしい生き方を体現してきた。
「私は決して無鉄砲なタイプではないんですよ」と笑う竹内さん。彼女が失敗を恐れずに「やりたい」気持ちに従ってこられたのは、なぜなのだろう。
ラグビーに魅了された高校時代
私がラグビーと出会ったのは、7人制ラグビーがオリンピックの種目として採用されることが決まった2011年。高校1年生の時でした。
ちょうどその年に、女子ラグビー選手を発掘し育成する目的の練習会があって。部活もせずにブラブラしていた私を見て「何か打ち込めるものがあれば……」と、父が勝手に申し込んだのがきっかけです。
それまでは、ラグビーとの接点はゼロ。「女子でラグビーって珍しいね」なんてよく言われますが、それまでラグビーのことを全く知らなくて。
なので、女子がラグビーをするのは珍しいという先入観もなかったんですよね。練習場所が自宅から近かったので、「まあ行ってみてもいいかな」くらいの気持ちで参加しました。
でも、一回やってみたらすごくしっくりきたんです。「もっとうまくなりたい」っていう気持ちが自然と湧き上がり、練習を重ねるごとにどんどんハマっていきました。
全国高等学校選抜女子セブンズラグビーフットボール大会出場時の竹内さん(写真:竹内佳乃さん提供)チーム競技のスポーツの中でもラグビーは選手同士が接触するコンタクトスポーツなので、誰一人気を抜けません。
チームメイトみんなで助け合いながら、しんどい時間を共有していくうちに、強い団結力を感じられるようになっていきます。
またラグビーは「ノーサイドの精神」というものがあり、試合でバチバチ闘ったあとは対戦相手とも健闘をたたえ合って仲を深められるんです。
そうやって、人間関係の輪を広げていけるラグビー特有の性質にどんどん夢中になっていきました。
未知の仕事「アナリスト」との出会い
そこまでどっぷりとハマったラグビーでしたが、選手活動は大学時代で終えることを選びました。
理由は、ラグビー選手としての自分の将来に可能性を見いだせなかったから。
ラグビー推薦をくださった大学もあったのですが、一生選手として生きていきたいかというと、疑問もあって。
「もしラグビーを辞めることになったら、この大学を出て何になりたいんだろう」と考えた時に、未来を描けなかったんです。
それでも、ラグビーとのつながりを断つことはしたくなかった。私はラグビーをプレーすることが好きだったのではなく、ノーサイドの精神が染みわたるラグビーの世界そのものが好きなんだと気付いたんです。
そこで、トレーナーを目指して立命館大学のスポーツ健康科学部に進学。ラグビー部でもトレーナーとして活動していました。
そして大学2年生になった私は、ニュージーランドへの留学を決意。
ニュージーランドは当時ワールドラグビーが発表する世界ランキングで1位に君臨しており、「ラグビー王国」と言われていました。そんな国の人たちが、ラグビーとどういう関わり方をしているのかを、自分の目で見てみたいと思ったんです。
そしてこの留学が、アナリストという仕事との出会いになりました。
ニュージーランド留学中の竹内さん。地元クラブチームの選手たちとのワンショット(写真:竹内佳乃さん提供)「ラグビーに関わる仕事がしたい」と話した私にヘッドコーチは、「三重ホンダヒートで学生のインターンを採用しているから、アナリストとして来てみない?」と誘ってくださって。
当時はアナリストという職業を全く知らなかったのですが、「日本のトップチームで働けるチャンス……!」と、二つ返事でインターンとして働くことにしました。
「自分を理解すること」が選択の自信につながる
アナリストの主な仕事は、試合の映像からさまざまなプレーをデータ化(数値化)していくこと。
そのデータをもとにコーチたちとディスカッション。課題を洗いだし、チームを強化するための方向性を定めていくことで勝利に導きます。
チームやコーチが求めているデータを提供したり、うまく活用してもらえるようアシストをしたり。そうしてチームに貢献できた時が、自分の仕事の価値を感じられるうれしい瞬間です。
インターンからそのまま就職し、気付けば6年。
もともと理数系が得意だったので、得意なことと好きなことを掛け合わせられるこの仕事は、天職だったなと感じています。
(写真:竹内佳乃さん提供)私が今こうして天職に就けているのは、「やりたい」という直感に素直に従って行動してきたからだと思います。
ニュージーランドに行ったのも、仕事内容も分からないままアナリストのインターンを始めたのもそう。
大学時代、周りが就職活動をしている中で三重ホンダヒートでのインターンを続けることを決めたのも、アナリストとしてもっと経験を積みたいと思ったから。
「もし就職先が見つからなかったら、ニュージーランドに戻ってどこかのチームに入れてもらおう」くらいに思ってました(笑)
行き当たりばったりで進む道を選択しているように見えるかもしれませんが、私が自分の直感に従って行動できるのには理由があって。
直感を信じられるのは深い自己分析をしてきたから
学生の頃から「私は何が好きなのか」「何が得意なのか」「何が向いていて、何が向いていないのか」を深く自己分析してきたので、自分自身のことをしっかり理解できている自信がある。
だからこそ、自分の直感を信じられるんです。
(写真:竹内佳乃さん提供)今後新しくやりたいことが見つかったら、今とは全く違う仕事にチャレンジするかもしれません。
今は、外国人のコーチや選手と一緒に働く中で「もっとうまくコミュニケーションを取りたい」と思うことが多いので、語学力を伸ばしていきたい。
それを生かして、いつか英語を使った仕事をするのもいいな、なんてぼんやり考えています。
未来のことは自分でも分かりませんが、今後も自分が「やりたい」と思ったことを大切に生きていきたい。
「やりたいことがあるけれど、勇気が出なくて踏み出せない」「失敗したらと思うと怖い」という人は、まずは自己分析をして、客観的に自分を見つめ直してみるといいかもしれませんね。
自分の得意なことと、好きなことが重なり合えば、それはきっと天職になります。もし一つの道で失敗しても、自分のことをよく分かっていれば、違う道もきっとすぐ見つかるはずです。
三重ホンダヒート アナリスト竹内佳乃さん高校入学後、女子ラグビーの育成と発展を目的に創設された国内最高峰のシリーズ戦・女子セブンズの「アカデミーセレクション」に応募したことをきっかけに、ラグビーに没頭。五輪種目になった女子セブンズの代表選手を目指すように。2014年、立命館大学スポーツ健康科学部に進学。選手ではなく、選手を支える道を選択する。16年にニュージーランドに留学し、アナリストの仕事と出会う。現在は、リーグワン唯一の女性アナリストとして「三重ホンダヒート」の分析部門を支える
取材・文/モリエミサキ
写真/三重ホンダヒート・竹内佳乃さん提供
編集・光谷麻里(編集部)
Woman typeの関連記事
●「“女性だから”と誰よりも思っていたのは私だった」片岡安祐美が一人の“野球人”としてガラスの天井を突き破るまで
●「へそまがり」を貫くことが仕事への誠意。菊池亜希子さんに学ぶ、自分らしく働くためのヒント
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。