(漫画:©︎三田紀房/コルク)記憶力や論理的思考力・説明力、抽象的な思考能力など、「頭がいい」といわれる人の特徴になるような能力というのは、先天的に決められている部分があり、後天的に獲得している能力は少ないと考える人が多いのではないでしょうか。その考えを否定するのが、偏差値35から東大合格を果たした西岡壱誠氏です。漫画『ドラゴン桜2』(講談社)編集担当の西岡氏は、小学校、中学校では成績が振るわず、高校入学時に東大に合格するなんて誰も思っていなかったような人が、一念発起して勉強し、偏差値を一気に上げて合格するという「リアルドラゴン桜」な実例を集めて全国いろんな学校に教育実践を行う「チームドラゴン桜」を作っています。そこで集まった知見を基に、後天的に身につけられる「東大に合格できるくらい頭をよくするテクニック」を伝授するこの連載(毎週火曜日配信)。連載を再構成し、加筆修正を加えた新刊『なぜか結果を出す人が勉強以前にやっていること』が、発売後すぐに3万部のベストセラーとなっています。第116回は駿台予備学校講師の宇野仙先生に、受かる受験生・落ちる受験生の特徴を伺いました(前後編の前編)。

キーエンスから予備校講師に

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われわれカルペ・ディエムでは、駿台予備学校東大専門校舎の「お茶の水校3号館」にて、2024年度から既卒生100人を対象とした『東大特化学習支援』を実施し、東大を目指す生徒の皆さんをサポートしています。

今回の連載は特別編です。お話を伺うのは、駿台予備学校講師の宇野仙先生です。宇野先生は、地理の講師として、これまで2万人以上の東大志望者を指導し、東大合格に導いています。また、もともとキーエンスのトップ営業マンで、そこから予備校講師になったという異色の経歴の持ち主でもあります。

僕自身も、宇野先生の講義を受けて勉強に目覚めて、東大に合格した生徒の1人です。そんな宇野先生に、「受かる受験生・落ちる受験生の特徴」を伺いました。

西岡:早速ですが、東大に合格できる生徒と、そうでない生徒の差は、どんなところにあると、宇野先生は考えていますか?

宇野:ポイントをあえて言うのであれば、こちらが説明したことに対して、「同じことを言える?」と生徒に質問し、それを答えることができるか・そうでないのかが、カギだと思います。

西岡:「同じことを言える?」ですか。

宇野:例えば、私が何かを説明したとして「なるほど、わかりました!」と答える生徒は多いです。

その後に「じゃあ、私がいま説明したことと、同じことを説明してみて?」と聞くと、生徒たちの反応は大きく3つに分かれます。

1つ目のパターンは、説明することができずに「えっと……」と詰まってしまう場合。この場合は、私の説明をきちんと理解できていない状態です。

2つ目のパターンは、説明することができても、私が話したこととまったく同じように説明してしまうパターン。この場合は、もう少し自分の中で咀嚼する必要がある状態です。

望ましいのは3つ目のパターンです。これは、自分の言葉で説明できる状態です。この場合は、本当に理解していて、テストで出題されたときも、きちんと解答できる状態になっています。

西岡:なるほど。3つ目の、自分で説明できているパターンの生徒が、東大に合格しているということですね。

(左)宇野先生(右)筆者(撮影:東大カルペ・ディエム)

宇野:できている、ということでもありますし、「自分で言い換えよう」と考えながら授業を聞いたり、人の話を聞く生徒が東大に合格している、という印象があります。

東大は「言い換えられるか」どうかを問う

西岡:僕は以前、『東大ノート。』という本を制作したときに、1000人以上の東大生のノートを研究したのですが、まさしく宇野先生がおっしゃっていたことと同じ特徴を見つけました。

東大に合格している生徒のノートは、決して先生が言っていることの“コピーアンドペースト”ではないのです。

先生が言っていることを、自分なりに言い換えています。例えば「危険性が増加した」と先生が言っていたら、「危険性:増」とか、「↑」など、自分なりの言い方で書き換えている場合が多かったのです。

宇野:そうでしょうね。そもそも東大は、地理という科目も含めて、「言い換えられるか」を問う問題を多く出題する大学ですからね。

西岡:それに関しては、まさに『ドラゴン桜』の漫画の中でも説明されています。東大は「言い換えられる生徒」を求めている、というシーンです。

※外部配信先では漫画を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

(漫画:©︎三田紀房/コルク)(漫画:©︎三田紀房/コルク)

西岡:東大では、国語でも、数学でも、社会でも、理科でも、与えられた情報を整理して「言い換える」問題が多いです。大学側がこうした問題を出題する意図には、普段から情報の言い換えができているのかを見極めたいからではないか、というシーンでした。

ちなみに僕も、宇野先生の授業で言い換えを求められた記憶があります。宇野先生に「授業の復習って、どうすればいいですか?」と聞いたときに、「授業後に、白い紙を用意して、そこに先生の言葉を再現できるかどうかチェックしてみるといい」と言われたのを覚えています。

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宇野:今でもその指導はしていますね。白紙に授業内容を再現できるのならば、それは授業をしっかりと理解できたということですし、逆に何も書けないのであれば、理解できなかったということでしょう。

東大に合格している生徒は、授業後の10分休憩のうち最初の5分間を、終わった授業の内容を咀嚼する時間に充てている場合が多いです。

それこそ白い紙にキーワードを書いていく、などの勉強法をしています。こうした「言い換え」=「咀嚼」の時間は、確実に頭をよくしてくれるはずです。

社会人になっても役に立つスキル

西岡:ちなみに宇野先生は、もともとキーエンスから転職されて、予備校講師になっていらっしゃいますが、社会人になってからもこのスキルは必要になると言えるのでしょうか?


宇野:私が働いていたのは、そこまで長い期間ではないので、社会人になってからのことを語るのはおこがましいのですが(笑)。

ただ、確実に同じことを求められるとは思います。例えば、上司やクライアントへの相づちの打ち方というのも、先ほどの3つのパターンで説明できます。

パターン1は、「はい」とか「そうですか」などという具合に、ただ相づちを打つパターン。パターン2は、「はい、〇〇ですね」というように、相手の言ったことを復唱するパターン。パターン3は、「それは、こういうことですね」というように、相手の言ったことを自分で言い換えるパターンです。

3つ目のパターンの相づちができている人というのは、相手の話を正しく理解していて、仕事でも活躍できる場合が多いですよね。

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