塾では計算の解き方は教えてもらえない
計算が苦手な子の親御さんにお伝えしたいことがあります。まず、塾では計算の解き方を教えてもらえません。よって、計算力は家庭で磨くしかありません。
「もっと速く、正確に解きなさい!」
という漠然とした声かけではなく、次の点に注意して家庭で取り組んでみてください。その際、親が隣について、子どもが計算を解く手元を見てみましょう。なぜわが子が計算ミスをするのか、遅いのかという理由がよくわかると思います。
①基本的な計算が身についていない「繰り上がりの足し算」「繰り下がりの引き算」「九九」は計算の基本です。中学受験では、小学校で習う”さくらんぼ計算”をいちいち使わずに、瞬時に答える必要があります。
②演習量が足りていないやみくもに計算問題集をやり散らかすのではなく、わが子の計算の弱点を分解し、その部分を徹底的に量で攻略します。たとえば、「帯分数の割り算」が苦手ならば、体にしみこむまで一定期間ずっと取り組ませます。とはいえ、子どもは一定期間解かないと計算手法はすぐ忘れるということも念頭に置いておいてください。
③雑すぎて何の計算をしているかわからない字が雑で、途中式を書いていないのは、「計算ミスしたい」と言っているようなもの。計算過程をきちんと書けない子に、他の分野の式が書けるわけがありません。式を書く重要性については追って説明します。
④解きっぱなしで見直しをしていない間違えた計算問題は、全部消して解き直すのではなく、必ず「どこを間違えたのか」を本人に探させましょう。とはいっても、小学生はこの作業をことのほか嫌がります。
そこで、親子で「どちらが先に間違えた場所を見つけるかヨーイドン!」とゲーム感覚を取り入れるのをおすすめします。一緒に見直しをしていくと、お子さんのミスしやすいポイントが見えてきます。それらをノートに書きとめていけば「計算お宝ノート」になりますよ。
計算ミスの多い子に読ませてほしい
さて、ここからはお子さんに向けて読ませてください。
■計算でミスが多い子へーーきょうこ先生からのメッセージ「もっと正確に解きなさい」
「もっと速く解きなさい」
なんて言われると、カチンとくるよね。わざと間違えようなんて思ってないし、多分合ってるだろうと思って答えを書いているし、もっと速く解いてしまいたいに決まってる。
テストのたびに最初の計算を落としたり、解き方がわかっているのに計算ミスで✕にされたり……。そのたびに「単なる計算ミスだし」と自分を納得させようとする気持ちもわかる。でも、算数って、文章題であれ図形であれ、すべて計算が必要なんだよね。
だから、やっぱり計算は「正確に」「それなりのスピードで」解けるようになりたい。ある日、突然そうはならないけれど、近づくための確実な道ならあるんだよ。
◎曖昧な計算方法をしっかり確認する
塾では「計算の解き方」を教えてくれません。4年生のときに「小数」と「分数」の+ー×÷を授業で1、2回扱う程度で、そのあと宿題で出される"小数や分数の交じった長い計算”や"□の入った計算”の解き方は、教えてもらう機会がなかったでしょ?
だから、解き方があやふやな子が、実はとても多いし、それはきみのせいではないんです。
だから、計算は「おうちの人の力」を借りるべし!
おうちでできる2つのこと
やること①チームワークで打開計算に取り組むときは、おうちの人に隣に座ってもらって、解いているところ(解いた後じゃないよ!)を見てもらおう。
「そこはカッコから先に解くんだよ」
「小数は分数に直さないと」
など、いろいろアドバイスをもらえるはず。ここで「自分はこう計算したい!」と我を通すのではなく、アドバイスに素直に耳を傾けることも大切です。
やること②毎日の計算は、雑な10問より丁寧な2問!
計算力は、我流でがむしゃらに解いてもアップしません。塾から毎日10問の計算が出されていても、雑に解いて半分以上が×ならば時間の無駄。
そういうときは、1日2問でいいから、「絶対に正解させるぞ!」という気持ちで丁寧にきちんと解くこと。スピードは意識せず、「正解させる」ほうに注力しよう。スピードアップは正確に解けるようになってからです。
ポイント!
・計算方法が合っているか、おうちの人に確認してもらおう。
・正確に解けるようになってから、スピードを求めよう。
ちなみに、お子さんは式を書いていますか?「何度言っても書かないんです……」という嘆きがドッと押し寄せてきそうです。
受験算数は、学年が上がるほど、難しくなるほど、図や式を書かないと解けない問題が増えてきます。今は書かずに解いて正解できても、書かない子たちは6年生になって、たいてい成績が下がっていきます。
さらに、今は中学入試だけでなく、大学入試をはじめ、さまざまな場面で「考え方や式」を書かせる機会がどんどん増えています。なぜなら、今の世の中は単なる正解だけでなく、「どう考えたのか」「なぜそう考えたのか」ということを、ほかの人たちに伝える力が必要とされているからです。
だから入試では、答えが間違っていても、「この考え方はここまでで納得できるな」という場合は部分点がもらえます。逆に、答えは合っているけれど式を書いてなかったら……カンニング答案とみなされて、不合格になってしまいます。
「式は不要派」と「式は必須派」の違い
さて、算数の先生には2種類います。「式は不要派」と「式は必須派」。前者は天才だと思ってください。つまり、指導者、教育者ではありません。
日本一算数が難しいと言われる灘中。大手進学塾で灘コースを長年担当されている先生に、あえて式の是非を問うてみたことがあります。灘中コースには算数オリンピック金メダル者もゴロゴロいますが、「式は必ず書け、と指導しています。そもそも、書かないと解けません」と即答でした。
「でも、書かなくても金メダルを獲ったり、灘中に合格する子もいますよね?」と食い下がってみたところ、「たしかにそういう生徒もいます。でも彼らは天才で、少数派だから何の参考にもなりません。さらに言うなら、算数はそれで解けても数学は書かないと解けない。だから、書かない子たちは数学で失速していきます」と。
子どもに式の必要性を自覚させるには、過去問の解答用紙を見せるのが非常に有効です。「四谷大塚 過去問」で検索すると、私立中学の入試問題と解答用紙が見られます。
この中でおすすめなのが「開成/麻布/鷗友」、そして「巣鴨/大妻」です。「開成/麻布/鷗友」は問題用紙と解答用紙が一体型になっており、表紙に「考え方も書くこと」と明記されています。
「巣鴨/大妻」は解答用紙の狭い枠内に考え方や式を書く必要があります。塾の模試は採点の都合上「解答のみ」が主流ですが、実際の入試問題はそうでない学校もあるということが、子どもにも視覚的にわかります。
式や図を書き写すことは重要
『勉強とメンタルの悩みを解決!【決定版】中学受験をするきみへ』(大和書房)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプしますさらに「書き方がわからない」という理由も実は非常に多いのです。その場合は、塾の授業の板書を必ず書き写してこさせましょう。子どもたちは「先生は、解説するために式を書いている」と思っていますが、われわれ指導者が実際に解くときも、きちんと図や式を書いて解きます。
先生やテキストが示す型を「なぜこう書いているのだろう?」と考えながら、そして理解しながら写すことによって、「書く型」が次第に身につきます。とはいえ、速いスピードで進む授業中に「考えながら」「書き写す」を同時に進めるのは至難の業。手順につまずいたら授業動画を活用しましょう。
私も全単元の解説動画を無料公開しています。ぜひ「きょうこ先生のはじめまして受験算数」で検索してみてください。
ポイント!入試本番の解答用紙を見せると、子どもに「書かなきゃ」という気持ちを抱かせることができます。
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