二番煎じの究め方とは(写真:yosan/PIXTA)この記事の画像を見る(3枚)地道に稼ぐ経営者の共通点は、「成功している誰かのやり方を、空いているほかの市場に持っていく」こと。新規性や差別化などは考えず、成功事例を徹底的にマネして、同じことをしていない市場に持っていっているだけなのです。「それなら、Appleをマネしたい」でもいいのでしょうか。ネットや本にあふれる膨大な知識を学ばなくても、起業で成功を収めることができる。地道に稼ぐ経営者のノウハウを体系化した書籍『どんなビジネスを選べばいいかわからない君へ』(村上学・著)より、一部を紹介します(全3回中の第3回)。

成功したやり方を完コピする

二番煎じを究めるとは、「成功している誰かのやり方を、空いているほかの市場に持っていく」こと。成功している誰かのやり方を完コピする(=マネる)方法を解説します。

では、最初にマネる方法を簡単に説明しましょう。

・参考にすべき企業をベンチマークとして10社リストアップ
・各社を分析し、自分に適した1社を選んで完コピする

ベンチマークとなる対象は、自分と親和性のある企業です。それは、現在の自分の人的リソース、資本リソースでマネられるところを指します。

たとえば、本屋で起業しようと思ったら、大型書店をマネるのは難しいので、まずは個人で成り立っているお店を調べてみます(もし見つけられなかったら、それはやるべきではないということ)。

そしておそらく、独立系書店が1つの候補として選ばれるでしょう。独立系書店は、本業である本屋にほかの業態(イベント、雑貨、カフェなど)を掛け合わせたもので、近年その数を増やしています。

親和性のある企業というと、本屋なら本屋と考えるかもしれませんが、もともと独立系書店はターゲットが同じであろう「ヴィレッジヴァンガード」など雑貨系のお店のほか、本をフロント商品として、バックエンドで利益率の高い雑貨や、飲食を提供して利益を確保しているブックカフェを参考にしているはずです。

つまり、親和性が高いという意味では、ベンチマークの候補になります。そのお店がどんな見せ方をしているのか? どこの業界に位置しているかによって、候補は広くとらえられるのです。

一方、銀座の蔦屋書店といった書店はベンチマークとして適切ではありません。蔦屋書店の規模感はもちろん、個人では(テナントとして入っている)スターバックスと組むのもむずかしいですし、そもそもマネタイズも異なります。

というのも、カフェや本は、ほかの店舗への呼び水という位置付けだからです。

同じようなビジネスモデルでは、百貨店におけるアート展でしょうか。集客力のあるイベントを最上階で行い、下の店舗で買い物をしてもらおうというシャワー効果をねらったものです。それが今ではアートがカフェや本に変わったという事情です。

業界について知っているというのは、「どんなマネタイズ方法があるのか検討がつく」ことも意味しているので、ここまではっきりと違う業態をベンチマークする可能性はないと思いますが、自分のリソースではマネできない企業のベンチマークはくれぐれも避けるようにしてください。

現在の自分にマネできるか?

現在の自分にマネできるか。それは人的リソース、資本リソースの2点から考えます。ベンチマークに対して、自分がどのポジションにいるのか次ページの図で確認してみましょう。

(※外部配信先ではイラストを閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)

(図:『どんなビジネスを選べばいいかわからない君へ』より)・Aは人的、資本リソースとともに足りているので、すぐにベンチマーク先をマネできる。
・Bは人的リソースは足りているが、資本リソースが足りていない。
・Cは資本リソースは足りているが、人的リソースが足りていない。
・Dは人的リソースも資本リソースも足りていない。

ベンチマークを完コピするためには、現時点でAにいる、またはちょっと努力すればAに行ける必要があります。そのように判断できるなら、ベンチマークは候補として適切です。

まずはスキルを身に付ける

足りないものがあったら立ち止まることはデメリットと考えがちですが、実は必要なことなのです。

つまり、それはAにいない状態のこと。現在の立ち位置がBならお金を貯める、もしくは調達する必要があり、Cならスキルを身につけたりする必要があります。

もしどちらも足りていないDにいる場合、スキルを身につけて、お金を貯めるルートを選んでください。というのは、お金を貯めてからスキルを身につけるよりも、経験や実績を積んでからのほうがお金は調達しやすいからです。

(図:『どんなビジネスを選べばいいかわからない君へ』より)

ベンチマーク候補をリストアップする際、スグもしくは準備すればマネできる規模でのナンバー1、または成功している(しっかり利益が出ている)企業です。

ナンバー2や3をマネても、競争優位性を維持することは難しいので、あくまでもトップのやり方をマネる、と覚えておきましょう。

まずは決算書を読んでみる

それを判断するには、決算書を読むのがベストです。ただし、自分がベンチマークする企業の決算書はなかなか見ることができません。なぜなら、そういう企業は決算書を公開していないからです。

現在、決算書を見る最もポピュラーな方法は、金融庁が運営しているサイト「EDINET」です。ここでは上場企業の決算書を検索することができます。

株式会社は貸借対照表の公告が必須だと記載されているのです。決算書のすべてを見ることはできませんが、貸借対照表は社員でも閲覧できます。

しかし中小企業の場合、公告の義務はありますが、公開している企業はそう多くありません。

起業当初は資本も小さくベンチマーク先となる企業も上場企業ではなく資本が小さい会社になるはずですから、決算書はおそらく見ることができないと思っておいたほうがいいでしょう。

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そのほかの手段としては、業界団体や勉強会などに参加したり、雑誌で零細企業をピックアップしている記事を読んだり、ネットで検索したり、YouTubeを見たりして情報を集めることもできます。

業界のお金の流れの構造は基本的には一緒です。飲食店なら、基本的なビジネスモデルはそれほど変わりません。

どこにお金をかけていて、どうやって集客していて何でお金を稼いでいるのか。そんな目で見ていると、あるお店だけ流行っていたらお金の流れに着目できるようになります。

「別に流行っているように見えないけど、なぜかはぶりがいい……」と疑問に思ったら、実はテイクアウトが強かったとか、ECに力を入れているとかが見えてくるのです。

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