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◆「換気減り冷房効くので喉渇かないはず」
問題となったのは、同中が今春出した「生徒指導の変更点と確認事項のまとめ」という文書。「水筒の使用について」という項目で「原則、授業中やテスト中は飲まないことをマナーとする」と記載した。配布された文書を見た保護者(48)は「今どきあり得ない。部活動などで熱中症の死亡事故が相次いでいるのに」と話す。 同中ではバスケ部顧問の男性教諭が骨折した生徒を放置した問題があり、これについて開かれた6月の臨時保護者会でも、保護者から水筒使用ルールに疑問の声が上がった。校長は「コロナ対策で行っていた換気が減り冷房が効くので、前のようには喉が渇かないはず。どうしてもという場合は許可する」と説明したという。 この校則について、同17日の市議会では北村文子議員が「体に直接影響があることを禁じてはいけないのは当然。やめさせていただきたい」と一般質問した。その後、市教育委員会は「授業中の水分補給を含めて適切な対応を」と市内の小中学校に通知を出した。◆「教師が話す間」に変わったが…「あいまいすぎて飲めない」
同中に通う生徒によると、その後、水分補給について「授業で教師が話している間や、班での話し合い中は飲まない」という指導に変わった。だが、ある生徒は「授業なので先生はずっとしゃべっている。いつ飲めるのか、あいまいすぎて分からない」と困惑。猛暑の日などは「昼休みに校庭で遊んだ後の5時間目は、特にのどが渇いてつらい」という。 同中の増田公之教頭は今月3日の本紙の取材に「項目は変えた」とした上で「現在、授業中の水分補給は禁じていないが、飲むタイミングはよく考えて判断するように指導している」と回答。「よく考える」の内容について具体的な説明はなかった。前出の保護者は「大人でも会議中に水分補給する。子どもの人権を軽んじている」と憤る。 他の公立中学校ではどうか。さいたま市内の複数の市立中に聞くと「体育の授業はもちろん、他の授業でも必要に応じて飲ませている。季節も限定していない」(浦和中)、「授業中も、自分のタイミングで適宜、水筒の水を飲めるようにしている」(本太中)、「なるべく休み時間にと伝えているが、授業中でも飲めるようにしている」(桜木中)などと回答があった。◆識者「社会から理解されにくい」
埼玉大の戸部秀之教授(学校保健学)は「学校での熱中症対策が強化されている中で、命を守る行動よりマナーを優先したようにもとれてしまう。両方優先したつもりでも、こういう文言が出されると保護者は心配するし、社会からも理解されにくい」と指摘。その上で、「水を飲む量やタイミングは体調や状況によって個人差が大きい。一律の対応は難しいし、そぐわない。『水分補給しろ』といってもあまり飲まない子もいて、促す視点も重要になってくる」と語った。
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