大阪市生野区は今、まちづくりの基本理念に「異和(いわ)共生」を掲げている。「異なったまま、和やかに、共に生きる」という意味だ。

 市によると、生野区の人口約13万人のうち2割強の約3万人が外国籍。特に韓国・朝鮮籍が約2万人を占める。

 生野と東成区にまたがる一帯は、かつて「猪飼野(いかいの)」と呼ばれ、地場の零細工場や川の改修工事での仕事のため、植民地だった朝鮮半島から多くの人々が移り住んだ。

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 厳しい差別のなかで、故郷の味を懐かしむ朝鮮人らは、キムチなどを売る「朝鮮市場」をつくった。それが今の「コリアタウン」へつながり、韓国料理店や化粧品店に年間200万人が訪れる。JR鶴橋駅周辺には焼き肉店が並び、香ばしい匂いが立ちこめる。

 そんな在日コリアンの街である生野区でも、住民のルーツは多様化し、市の統計で約80カ国(3月時点)に及ぶ。

 外国籍住民全体の数はこの10年、3万人弱でほぼ変わらないが、韓国・朝鮮籍者の割合は2014年の90%から66%に減少。一方、ベトナム(1→12%)や中国(6→12%)、ネパール(0→4%)の割合が急増した。

 区内に数校ある日本語学校の留学生が増え、新今里地区にはベトナムの食材や料理を売る店も集まる。

 区は多言語発信や、やさしい日本語の普及に取り組み、今年度は外国人住民の抱える課題や支援のニーズを調査する新事業も始めた。

 筋原章博区長は2月、外国人に関わる学校や団体が集まる会で「従来の行政手法では対応できない課題も増えており、生野が日本社会のモデルとして解決法を示していきたい」と述べた。

半年余りの長期ルポ 5カ所を紹介

 記者2人が昨年秋から、外国にルーツをもつ住民のうち、今後の社会をつくっていく「子ども」に焦点をあて、生野区内の5カ所=地図=を継続取材しました。

 日本全体の外国籍住民は341万人(法務省統計)で、この10年で1.7倍に増加しています。今後の日本社会のモデルになりうる生野の「共生」のあり方を、子どもたちの姿を通して、30回ほどの連載でお伝えします。(大滝哲彰、玉置太郎)

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